この会談について、朝鮮半島問題に詳しい、拓殖大学大学院特任教授の武貞秀士(たけさだ・ひでし)氏に評価を聞いた。
「今回三年半ぶりに、日中韓の首脳会談が実現したということは喜ばしいことです。隣国同士の首脳会談がなかなか行えなかったことは正常ではありません。中でも日韓の首脳会談が安倍首相と朴槿恵大統領の下では初めて単独で行われました。これはアジアの安全保障、金融や貿易の問題等を解決していく上で、ひとつの出発点になると思います。日韓首脳はそれぞれ心の中にあるものをお互い述べ合ったということで、これから外交当局間の協議が始まると思います。ただし、問題解決に向かうかどうか、というと必ずしも見通しは明るくありません。慰安婦問題、竹島の領有権問題、また日韓の間に来たるべきアジア金融危機が起きたときに、互いに外貨を融通するかどうかという問題で考えがひとつになっていません。懸案事項はたくさんあります。ただ、今回の首脳会談は、異常な状態を解決する、ひとつのきっかけになったでしょう。」
スプートニク:慰安婦問題で日韓は落としどころを見つけられるでしょうか。日本側が今後補償や謝罪などをする可能性は。
「慰安婦問題に対する安倍政権の姿勢に、大きなブレはありません。国家としての慰安婦の施設の経営はなかった、という立場です。歴史的な事実が色々出てきていますが、女性を慰安婦にするために強制連行したという事実は確認されていません。慰安婦の人たちを日本軍の中で、組織の一部として利用したこともありませんでした。この部分に関しては新しい事実は出てきていませんので、安倍総理は国家としての謝罪はしないし、国家による補償はないという姿勢を崩していないわけです。
ただ、注目すべきは、今まで日韓の間では、安倍首相は『日本側の立場は1965年の日韓国交正常化時の日韓基本条約で、慰安婦の問題は解決済み』と言ってきました。しかし記者会見等で『これからお互いが納得のいく方向、解決に向けて、外交当局者間で協議をしていくこととした』と説明をしています。安部総理が直接テレビ出演をして、インタビューで答えた中でも、これから解決に向けて努力していきます、と発言しています。そしてアジア大洋州局長が韓国のカウンターパートと協議をすることが既に決まっています。
既に解決済みと言っていたものを、お互いが納得のいく落としどころを見つけるために協議を始めることにした、という点では、安倍総理の方も一歩、歩み寄った形です。ただ日本は、慰安婦の問題では韓国が何度も蒸し返してきた、という風に見ています。落としどころを見つけて合意をしても、また蒸し返すのではないかという心配を、政府も日本国民も持っています。
慰安婦の方々に対する補償については、今まで日本側が準備してきたアジア女性基金がありましたが、これで完全に慰安婦に対する補償が終わったわけではありません。慰安婦の方で日本政府の補償でないものは受け取れないと言って、一部受け取りを拒否した人がいたという事実はあります。今後、アジア女性基金という民間の事業のフォローアップ事業を拡大して、残る慰安婦の方々に対する補償という形で日本が歩み寄る準備をする可能性はあります。そして、そういった事業を完結するときに、もう韓国がこれを蒸し返すことはないという確認をとる、何がしかの形がやはり日本側には必要です。今回の日韓首脳会談では、両者は忌憚なく話し合ったと言ってはいるものの、まだこの点で合意に至ってはいないでしょう。」
慰安婦の方々に対する補償については、今まで日本側が準備してきたアジア女性基金がありましたが、これで完全に慰安婦に対する補償が終わったわけではありません。慰安婦の方で日本政府の補償でないものは受け取れないと言って、一部受け取りを拒否した人がいたという事実はあります。今後、アジア女性基金という民間の事業のフォローアップ事業を拡大して、残る慰安婦の方々に対する補償という形で日本が歩み寄る準備をする可能性はあります。そして、そういった事業を完結するときに、もう韓国がこれを蒸し返すことはないという確認をとる、何がしかの形がやはり日本側には必要です。今回の日韓首脳会談では、両者は忌憚なく話し合ったと言ってはいるものの、まだこの点で合意に至ってはいないでしょう。」