原発が実用化されてから今日までに大きな事故は3度起こっている。米国のスリーマイル原発事故(1979)、ソ連邦のチェルノブイリ原発事故(1986)、そして福島第一原発事故(2011)だ。福島第一原発事故を受け、ドイツは原発全廃を決めた。日本では事故後2年間、原発の稼働が全面停止された。IAEAは原発の安全基準の見直しを迫られた。起こり得る事故を設計段階で排除することについて、「アトムエコ」展参加者、サンクトペテルブルクの「アトムプロジェクト」研究所化学技術課長ニコライ・プロハロフ氏がスプートニクの取材に答え、次のように語ってくれた。
「福島第一原発事故後、全世界で追加的安全措置がとられた。具体的には、新規原発建設の際に、追加的なセキュリティシステムが搭載されるようになった。非常事態の発生を予測する装置だ。おそらく、福島第一原発事故後に出現した原発設計上の新工夫のなかで一番重要なのが、コリウム(核燃料とそれに隣接する融解した物質の混合物)を集める、『キャッチャー』と呼ばれるものだろう。福島第一原発で何が起こったのかを思い出してほしい。冷却システムが作動しなくなり、燃料の融解が起きた。こうした事態に備えて、原子炉に『キャッチャー』が備えられるようになった。これがコリウムを回収し、外部に危険な物質が漏れるのを防ぐ。いま設計中の現代的原発では、福島第一原発のような事故は、原理的に発生し得ないのだ。福島第一原発は古い原発だ。完全な備えはなかった。福島第一原発1号機は米国の設計で、1971年に建てられた。いま設計され、または建設されている現代的原発は、高い安全性を誇っている」
「融液キャッチャー」はチェルノブイリ原発事故直後にロシアの学者らが開発したものだ。しかし実際の製造は一時中断され、90年代末にようやく再開された。この間はフランスが同様のものを開発していた。ロシア版の「キャッチャー」第一号は、中国の田湾原発とインドのクダンクラム原発に初めて実装されている。前者の1号機と2号機は既に稼働を開始している。福島第一原発事故を受け、今や「キャッチャー」は世界の原発設計で必須の技術となっている。