ロシアの設計する新たな核兵器システム「ステータス6」という名称の巨大な戦略魚雷。描写からこの魚雷は沿岸都市や海岸沿いの施設へ核攻撃を行なうためのものであることがわかる。魚雷は1万キロという途方もなく長い射程距離をもち、事実上これは、水深1000メートル近くをハイスピードで移動する核兵器を搭載した無人潜水艦になぞらえることができる。
魚雷の開発情報が現れる前にプーチン大統領はいかなるMDをも凌駕する兵器の開発に取り組んでいることを明らかにしていた。全体から察するに魚雷に関する作業はまだ初期段階にあり、その生産は2025年より前には始まらないだろうと予測できる。エネルうギー仕様の形など、設計の多くの重要部分は現時点では明らかにされていない。魚雷運搬手段となるのは現在建造中の潜水艦「ベルゴロド」や「ハバロフスク」となるだろう。
こうした魚雷を作る構想自体はそう新しいものではない。有名なソ連の科学者で政治的抑圧を受けたことで知られるアンドレイ・サハロフ氏は1960年代、戦略魚雷T15を指示した。これは100メガトンという非常に強力な弾頭をもつはずだった。これだけの弾頭があれば海岸近くの都市を破壊できる巨大な津波を引き起こすには十分だとされていた。冷戦の最中でさえ、こうした構想はソ連指導部には人間離れしたものと受け止められ、実現化はされていなかった。おそらく「ステータス6」の場合はより出力の低い魚雷ではあるものの、非常に発見しにくく、より長い射程距離をもったものだろうと予想されている。
MDにどれだけ投資しようと、米国は新型の潜水型の脅威からは自国を守りきれないだろう。理論的には機械自体は発見し、殲滅することができるが、そのためには仮想敵国は海岸線沿いに対潜水艦防衛システムを配備するため、巨額の追加投資を行なわざるを得なくなる。
大陸弾道ミサイルと対抗できるほどの射程距離をもった潜水機器「ステータス6」はいかなる軍縮合意、軍備コントロールのカテゴリーにも相当しない。魚雷自体は核が装填されておらず、現在ある国際規範の観点から自由に使用が可能。原則的にはロシアはこうしたシステムを(もちろん核弾頭の無い状態でだが)、たとえば中国、インドなど自国のパートナー国に自由に渡す可能性も有することになる。ロシアの主要都市は大陸内陸部または海岸部だったとしてもバルト海や黒海など大洋から孤立した海域の沿岸部にあることから、こうしたクラスの兵器が広く用いられたとしてもロシアの安全は揺るがない。
しかも標的に達するまで数日ないしは1週間を要すこうしたシステムは、その製造は理論上は戦闘上の課題から呼び起こされた可能性がある。魚雷は紛争が核の使用段階に達する前、紛争エスカレーションの初期段階で発射され、その間に紛争の正常化が図られれば、魚雷には自滅司令を送ること行なわれることが想定されている。