先日オバマ大統領は、南シナ海の状況について声明を出したが、それは、アジア太平洋地域における米国の地域政策、そして米中関係において、この問題の持つ意義について語っている。マニラで開かれたAPEC首脳会議の場でオバマ大統領は、フィリピンのアキノ大統領と会談したが、その際オバマ大統領は、南シナ海で領土問題をめぐり係争中の島々での建設作業を中止するよう、中国に対し求めた。米政府は、中国当局を批判しつつ、さらなる領土要求や新たな建設行為、そして軍事化の停止に関する義務を含め、中国側に緊張のレベルを下げるよう、絶えず求めている。しかしその一方で米国は、自分達が南シナ海を、力による行動が一般的だったあの冷戦状態に戻していることを気づいていないようだ。
呉勝利海軍司令官は、米国は南シナ海での挑発行為を止め、自国の海軍作戦を縮小すべきだと主張している。司令官の言葉によれば、中国は、米中関係を維持するために、米国の挑発に対し最大限の自制を示しているとの事だ。
米中両国は、協力に極めて大きな関心を抱いているにもかかわらず、南シナ海での対立は、二国間関係にますます大きな軋轢を生みだしている。恐らく米中のどちら側にも、譲歩するつもりのない事が、事態を悪化させているのだろう。中国は、人口島に一連の軍事建造物を作った事で本質的に強化された自分達の立場を弱める気はないだろうし、米国にとって中国政府の強大化は、中国の影響力拡大を制限すべきだと今一度強調し、アジアにおける米国の存在感の重要性を新たにアピールする、よい口実となっているからだ。こうした事を、中国との間に領土問題を抱える一連のアジア太平洋諸国は、ひどく歓迎している。
さてロシアだが、南シナ海での対立には巻き込まれていないが、出来事の推移に不安を感じている。特に南シナ海が、グローバルな経済発展の中心地から集中的に船舶が行き来する場所である事、そこが新たに「ホットポイント」になる恐れがある事は、大きな懸念を呼び起こしている。ロシア政府は、紛争当事者すべてが、力を用いることを控え、問題を政治的外交的手段で調整すべきだと考えている。地域の問題に干渉し、問題を国際化する事は、何の実りももたらさない。