元駐中国防衛駐在官で、現在は東京財団研究員・政策プロデューサーの小原凡司氏は、日本がアメリカの「航行の自由作戦」を支持するのは、必ずしてもアメリカに同調するためだけのものではなく、日本の国益を鑑みてのことだと指摘している。
しかし能力的な意味では、自衛隊にとっては大きな負担になる可能性があります。もちろん政府の命令があれば南シナ海のパトロールを遂行する能力はありますが、継続的に南シナ海に新たな部隊を派遣することになると、海上自衛隊にとって、将来的にはその負担が大きいものになると思います。特に訓練の不足によって艦艇の乗組員・航空機の搭乗員の錬度に、少しずつ影響が出てくるかもしれません。
最もリーズナブルな対処法は、現在ソマリア沖に展開中の、海賊対策に参加している艦艇・航空機を利用することです。それらはソマリア沖に派遣する際・あるいは日本に帰島する際に、南シナ海を通っていますので、これまでと寄港地を変えるなどして、それを「パトロール」だと言うことはできると思います。パトロールといっても実際のところは、南シナ海が公海であり、そこを自由に航行できるということさえ示せばよいわけですから、この目的は達成できると思います。」
また、小原氏は、米国が行っているように、海上自衛隊が中国の人工島から12カイリ以内を航行することに関しては、任務として行うべきではないとしている。
小原氏「アメリカ海軍は、万が一中国軍が対抗的な手段をとった場合、これに対し次のオプションに進むことが出来る、すなわち新たな軍事活動を展開することが可能です。しかし日本が万が一同じことをした場合、あくまで日本の活動は軍事活動ではありませんので、軍事衝突が起きた場合に次に取るべきオプションがないということになります。日本は新しい安全保障法制になっても、個別的自衛権の行使の要件は全く変えていません。南シナ海で海上自衛隊の艦艇が攻撃を受けたとしても、個別的自衛権行使の要件である『他国からの組織的・計画的な攻撃』にはあたりません。そうすると自衛権は発動できず、日本は次のオプションが取れないということになります。これは軍事作戦としてはあり得ないことでですから、こうした作戦は行うべきではありません。」