そうした機能は、反テロ作戦を実施する際に必要不可欠なものだ。またロボットスーツは、人間にとって危険な条件下での作業、ガレキの撤去や宇宙飛行、深海での活動などにも適用できる。公開されているマスコミ情報によれば、現在、こうしたロボットスーツは、日本の他ロシア及び米国で実際に作られた。
数年前、筑波大学の専門家達が製作したロボットスーツ「HAL (ハル/Hybrid Assistive Limb)」をベースに、福島第一原発内で作業するロボットが試作された。そしてつい最近、日本の厚生労働省は、筋骨格系に障害を持つ人々のためにロボットスーツ「HAL」を販売する事を許可した。販売ライセンスを得たのは、筑波大学の山海嘉之(サンカイヨシユキ)教授をリーダーとするベンチャー企業サイバーダイン(Cyberdyne)社だ。この会社が製作した装着型医療ロボは、強さと軽さを兼ね備えた特別の素材から作られた下肢のための機器で、テストの結果、これを装着する事で失われた機能が補われ、高齢者や障害者、事故などで負傷した人々の生活支援に有益である事が証明された。
スプートニク日本のリュドミラ・サーキャン記者は、ロシアの専門家ボリス・ボヤルシノフ氏に、こうしたロボットスーツについて聞いた―
「ロボットスーツは、その本質は、人間が操縦するマニピュレータ―でありサイボーグです。脳は人間ですが、手足や胴体はロボットというわけです。普通は、筋肉の収縮は、脳が中枢および末梢神経系の構造を通じて送る刺激(パルス)により起こります。でも、何かの病気や損傷があった場合には、そうした刺激が不十分になるか、あるいは伝わるのが非常に難しくなり、そうすると人間は、自分で動く事ができません。
しかしロボットスーツを装着すると、特別のセンサーが刺激(パルス)を読み取り、最も微弱な生体電気信号も強めてくれます。そして健常者の歩行をもとに作られた特別のメカニズムが、四肢を動かす助けをします。さらに四肢の動きは、股関節と膝関節の部分にあるメカニズムにより刺激を受けます。つまり患者自身が、自分の身体と意志で、運動プロセスを引き起こすのです。患者のイニシアチブにより運動が起こされた後、今度は、四肢から戻ってきた信号に脳が反応します。その結果、脳の一部が再活性化し、失われた神経筋肉の連絡組織の再生につながるのです。」
こうした発明のおかげで、寝たきりだったり車いすでしか移動できなかった人達が、疲労を感じることなく、一人で歩いたり走ったり、身をかがめて重いものを持ち上げたりできるようになるだろう。またロボットスーツは、近所の薬屋まで行くのに悲壮な覚悟をしなくてはいけないような高齢者にとって、問題を解決してくれるユニークな存在になる可能性もある。
拓殖大学で教鞭をとるワシーリイ・モロヂャコフ教授は、スプートニク日本記者の取材に対し「日本にとって、こうした発明は、特別アクチュアルな意味を持つ」と指摘し、次のように続けた―
「日本社会は高齢化が進み、現在国内には、100歳以上のお年寄りがおよそ5万人もおられます。その数は、大変速いテンポで増えており、大きな問題となっています。それゆえ重病者や高齢者の介護を軽減する器具や、そうした人達が自分で歩くのを助けるような仕事は、実用科学的開発において非常に重大な方向性を持っています。高齢者や寝たきりの病人に対する医療やケアは、現在、ロボットを使う意味のある極めて重要な分野です。そしてロボットを実際に利用する、もう一つ有望な分野としては、事故後の福島第一原発のような放射線量の高い場所での作業や、倒壊した建物のガレキの撤去作業などが挙げられるでしょう。」
ロシアで初めて、下肢の運動機能に障害がある人達のリハビリや社会生活支援用に、装着型医療ロボットの販売がスタートするのは、来年2016年だ。こうしたロボットの開発プロジェクトは「ExoAtlet」と名付けられ、モスクワ郊外のイノベーションセンター「スコルコヴォ」の研究者達が取り組んでいる。今のところ外国製のロボットスーツは、ロシア製のものより優れているが、大変高く、障害者の大部分にとって手の届かないものだ。「スコルコヴォ」は、価格的に手頃で、より軽く機動性に優れた国産品を開発しようと努力を続けている。
最後に付け加えておきたい事がある。来年秋にチューリヒで、サイボーグとその開発者を対象にした初の世界規模での競技会が予定されている。エレクトリック・アイや人工四肢、思考するサイボーグなどが出品される見込みだ。この競技会は、サイバートロンという新しいスポーツ種目になるのではないかと注目されている。