事前に日本側は、国際捕鯨委員会(IWC)に対し、自分達の決定を通告し、委員会に修正した計画を送った。それには、ハーグの国際司法裁判所と国際捕鯨委員会の作成した29項目の修正案が盛り込まれた。このようにして日本は、今年12月にスタートする2016年のシーズン捕鯨の実施を特別に許可してもらおうと期待している。
「国際司法裁判所は、日本はミンククジラをあまりにたくさん取り過ぎたと見ている。しかし国際捕鯨委員会は、そうは考えていない。現在ミンククジラの数は、およそ60万から70万頭に達している。科学的に見て、これだけの数生息していれば、今後100年のあらゆるリスクを考慮しても、3千頭捕獲しても個体数には影響がない。これに対し日本が捕獲しているのは、400から500頭だ。また国際捕鯨委員会の科学委員会は、まず第一に、日本が違法に捕獲したとみなした事は一度もない。そして第二に、日本の捕鯨が、学術目的のためではなく行われていると一度も反論した事もない。」
日本に対する基本的な批判は、日本人達が、調査捕鯨という目的に隠れて、実際は、商業目的のためにクジラを殺している点にある。日本は「一連の調査を公開せずに実施するのは不可能だ、学術研究用に適さなかった肉だけが売りに出ているのだ」と説明している。また日本側は「クジラ肉を食べるのは、民族的伝統であり、それを捨て去る事は出来ない」として、自分達の主張を正当化している。
スプートニク日本記者は、さらにイリヤシェンコ主任の意見を聞いてみた-
「国際捕鯨取締条約は、3つのタイプの捕鯨を調整している。まず商業捕鯨だ。それは凍結が決まっているが、いくつかの国々は、ある条件が認められており、条約はそれを規定している。アイスランド、ノルウェー、ソ連の継承国としてのロシアといった国々だ。アイスランドとノルウェーは、現在に至るまで、自分達の権利を用いてクジラを獲っている。ソ連は、漁の凍結に加わり、捕鯨船団全てを閉鎖したが、いつでも捕鯨を再開できる権利を持っている。日本は、そうした留保条件を得ようと試みたが、上手くいかなかった。米国により、日本は、そうした留保条件を撤回せざるを得なかったのだ。それは、いわゆる日米タラ戦争の時期だった。米国は、日本の漁船の米国の経済水域内への立ち入り、そして日本の海産物の輸入を禁止するなどとして日本側を脅した。
また条約は、デンマーク領グリーンランドや米国のアラスカ州、ロシアのチュコトカ半島で行われている先住民族のクジラ漁を調整している。
三つ目の調査捕鯨に関して言えば、条約の中にはっきり、学術目的での捕鯨には割り当てはないと明記されている。とはいえ学術目的での捕鯨をしている国は、国際捕鯨委員会科学委員会に、どこでいつ何頭、どういう目的で捕獲するのかを示すデータを提出する義務を負う。日本の過ちは、自分達にとって必要なものをはっきり示さなかったことにある。統計データを集めるため、正確に何頭クジラが必要なのか、その事をはっきり根拠づける必要がある。
さてクジラ肉の販売についてだが、調査後、捕獲したクジラで何をすべきかについて、条約には書かれていない。日本人が毎年南極海で捕獲しているクジラを、彼らが海に投棄したとして、それが一体誰にとってプラスになるというのだろうか?」
予測されたように、オーストラリアと国際環境保護団体は、再び日本を激しく批判した。しかし恐らく、日本の捕鯨にとってより大きな脅威は、捕鯨中止を求める環境保護団体というよりはむしろ、日本の消費者が、クジラ肉に関心を失ってしまったことにあるだろう。長年、日本ではクジラ肉が食用にされ需要も高かったのだが、消費者の好みは変化する。統計によれば、ここ15年間で、クジラ肉の生産加工流通業者の数が、半分に減った。流通業者らは「クジラ肉は高いので不人気になっている。それを使った料理についての情報も不十分だ。加えて捕鯨についてのネガティヴなイメージもマイナスだ」と指摘している。
果たしてそれでも、捕鯨は日本人が自分達の文化的伝統を守るために必要なのだろうか?