2014年7月、「国家決済カードシステム(NPCS)」が創設された。その後NPCSは、ロシアの複数の銀行と同様、国際的制裁の対象となった。NPCS のウラジーミル・コムレフ総裁は、2016年下半期に新カード「ミール」の量産を計画していると述べ、次のように語っているー
「来年は私たちにとって非常に重要な年です。カードを利用できる加盟店や(ATMなどの)設備のネットワークを拡大し、第3四半期までにカードの利用範囲に関して、ロシア人がすでに利用することに慣れた支払い手段と肩を並べたいと思っています。私たちは、『ミール』カードをロシア国外でも使用できるようにするための活動も並行して行っています」。
全てが計画通りに行った場合、「ミール」カードは、2016年末までに3000万枚以上発行され、2018年末までに、少なくともロシアの銀行カード市場の半分を占めることになる。また2016年後半から、日本のクレジットカード会社「JCB」との共同ブランド・カードの発行も始まる。NPCSのサイトでは、次のように発表されている-
今年12月、ロシアの大手銀行の一つ「ヴネシプロムバンク」も、ロシアの顧客のためにJCBカードの発行を開始した。「ヴネシプロムバンク」は、ガスプロムバンク、VTB、スヴャーシ・バンクに続いて、JCBのロシアにおける新たなパートナーとなった。
なおロシアでは2015年までJCBカードが発行されていなかった。なぜならロシアには、JCBカードの発行ライセンスを取得している銀行が一つもなかったからだ。「ヴネシネプロムバンク」法人サービス部の責任者を務めるマリヤ・ロゴジナ氏は、「スプートニク」のインタビューで、ロシア人の間でJCBカードの需要は高まっていると述べ、次のように語っている-
「私たちはカードの発行を開始しました。加盟店との契約に関する業務を行うアクワイアラーについて述べるとすれば、私たちはプロジェクトの第2部の実現に近づこうとしています。恐らく第2部は来年の初めになるでしょう。また私たちは、2016年初旬に、ルーブル、ドル、ユーロだけでなく、円の口座開設も顧客の皆さんに提供できるようになると考えています。このカードが顧客をひきつける理由は何でしょうか?それは、JCBがアジア太平洋地域の自社の顧客に特恵、そして口座を開設して円貨決済できる可能性を提供していることです。最近アジア太平洋諸国へ出かけるロシア人が増えており、ロシア人が同地域で行う取引の数が増え続けていることを考慮した場合、カードの利用者は直接円で支払いを行う可能性を得て、ダブル両替を避けることができ、メリットを持つことになるのです」。
中国のクレジットカード会社「銀聯(ユニオンペイ)」は、3年以内にロシア人の顧客向けに200万枚以上のカードを発行する意向を発表した。「ユニオンペイ」カードは、ロシアを含む30カ国以上で発行されている。「制裁戦争」が始まる前、ロシアでは少数の消費者しか「ユニオンペイ」カードを使っていなかった。なお当初は、シベリアと極東のみで需要があった。しかし今はロシアの19行が「ユニオンペイ」と提携しており、提携銀行の数は増え続けている。
また米国のプレミアム・クラスのクレジットカード会社「アメリカン・エキスプレス(アメックス)」が、ロシアにおける事業戦略を変更し、ロシアでの顧客基盤を拡大する計画であることが分かった。露紙「コメルサント」が消息筋の話として伝えたところによると、「アメックスは、同社のカードが、プレミアム・セグメントの顧客間だけで広がるのではなく、一般の人々にも利用されるようにするため、大衆セグメントへ参入する方針」だという。現在アメックスのカードは、ロシアで数百万枚発行されている。なお、アメックスのカードの発行に関する独占権を持っているのは「ロシア・スタンダード」銀行だ。
現在ロシアではおよそ2億万枚の銀行カードが発行されている。うち60パーセントは「ビザ」カードで、35パーセントが「マスターカード」だ。金融業界のこのような大御所を押しのけるのは、容易な課題ではない。