テロの脅威はここ数年、中国の内情を脅かす最重要ファクターのひとつとなっている。「国家安全保障青書」に記されている通りだ。今回初めて反テロ法が採択されたことは、中国指導部がこの問題を憂慮していることの表れだ。脅威の高まりを受け、全政府機関がテロ対策に向け作業を調整することが必要になったのだ。
ここで思い出すべきは、中国の治安機関が新疆で行った過激派取り締まりが、長年、西側で誇大に批判されていた、ということだ。信教の自由に対する弾圧だ、とか、人権侵害だ、などとも言われた。もちろん、そうした批判は、ますます洗練された手法で恐怖心を煽り立てる戦闘員らを利したばかりであった。
今や、中国が、西側諸国が苦しめられているのと同様の脅威に苦しめられ、同様の形態のテロ活動に苛まれているのだということに、疑いを持つ人は少ない。中国専門家でロシア科学アカデミー極東研究所主席研究員のヤコフ・ベルゲル氏はそう語る。
「それは実際、その通りなのだ。テロリズムは国際問題であり、個別の国のそれではないのだから。中国北西部、新疆出身の戦闘員らは、まず東南アジアに入り込み、のち中東に入る。このことは確証されている。この事実は確認済みだ。であってみれば、新疆出身のテロリストらを中国に帰還させるためには、多くの国の対テロ機関の共同の努力が必要なのだ。さもなければ脅威は増大するばかりだ」
ダーイシュ(IS、イスラム国)やシリア危機で、テロという問題への関心はさらに高まった。新疆出身者らがシリアの訓練キャンプで訓練を受けているという情報は、警戒すべきものだ。中国は既にテロの脅威の中和に関するロシアの取り組みへの支持を表明、国際協力拡大に用意がある旨を述べた。今回採択された新法で、そのための新たな可能性が開ける。たとえば、同法により、初めて、中国の軍事力を外国での対テロ作戦に用いることが出来るようになる。