今回、エーザイ・ロシア代表の真砂野一彦(まさの・かずひこ)氏が、スプートニクのインタビューに応じてくれた。エーザイが企業理念として掲げているヒューマン・ヘルスケアの概念が、医療文化の大きく異なるロシアでも認知され始めてきたのは何故か。
ヨガを初めて数ヶ月でコミュニケーション・スキルが改善し、子どもたちの笑顔が多く見られるようになりました。このようなことを通じて、てんかんの発作は起きにくくなってくるのです。こういった患者様の一部は当社の製品を服用されています。ヨガで運動機能を改善し、同時に薬でも発作のコントロールをするというわけです。ヨガ・クラスは非常に好評なので、今後ロシアの他地域にも展開していく予定です。」
また、エーザイ・ロシアはがん分野でも独自の取り組みを行っている。エーザイ・ロシアの営業担当者によると、ロシアの多くの病院は診療時間が決まっており、一人あたり約12分だという。これはがんを含む、どのような疾患でも同じだ。しかしその12分の間にがんを告知されたら一体どうするか。自分はどれくらい生きられるのか、どんな治療をいつから始めればよいのかといった不安や疑問がわいてくる。これらの疑問を12分間で消化することは不可能だ。そこでエーザイ・ロシアは乳がんの告知を受けた人のための動画を作成した。動画では、乳がんを告知された女性たちが自分の体験を語り、前向きにがんと戦う姿を見せている。これを見ることで気持ちが整理でき、がん患者は生きるための治療を開始しようという気持ちになれる。乳がんの治療は、手術をして乳房を取るか、抗がん剤による化学療法のどちらかを選択することになるが、抗がん剤には副作用があり、治療後の社会復帰に影響を及ぼすことがある。
エーザイ・ロシアでは、日本人は真砂野氏一人で、あとの従業員約50名はすべてロシア人だ。ロシアに居を構える日本企業幹部の中には、労働文化の違いから、ロシア人従業員とうまく関係を築けないケースもある。なぜ日本人が一人しかいない中で、エーザイの理念を浸透させ、いくつもの新しいプロジェクトを始めることができたのか。真砂野氏はコミュニケーションの秘訣について、次のように話している。
真砂野氏「私はおしゃべりな方で、皆と話したいのですが、従業員からはなかなか寄ってきてくれません。ですので、たわいもないことでも自分から声をかけるように心がけています。自分から飲みに誘ったりと、日本風コミュニケーションも大事にします。ロシア人というのはメンタル面ではアジア人で、義理人情を理解してくれます。また、とてもラッキーなことに、エーザイ・ロシアの従業員は規律正しくて信頼できる人ばかりです。今では従業員やパートナーとの間に強い絆ができたと実感しています。」