安倍首相がイランを訪れる基本的理由の一つとして、日本の官僚達は、中東において増大する中国の影響力への対抗を挙げている。観測筋は、安倍首相のイラン訪問について検討が始まったのが、習近平国家主席のサウジアラビア、エジプト、イラン歴訪実施の時期と合致している点に注目している。
北京にある中国人民大学のファン・ウェイピン(黄卫平)教授は、中国の対アラブ戦略について「資源にのみ関心を向けられたものではない」とし、次のように強調した―
「アラブ世界にとって、加工部門やインフラへの投資による経済構造改善を目的とした中国との協力は、有益だろう。中国は、加工業に優先性を置いている。協力は、資源と加工業の力を組み合わせる事にある、これはアラブ諸国にとっても、中国にとっても有益だ。」
対イラン制裁の解除後、イラン政府は、経済上商業上の環境の再編や改善に向け、あらゆる努力をし、外国からの資本の呼び込みに関心を抱いているが、あらゆる問題において、中国は、重要なパートナー国の一つに躍り出ている。
イランのロウハニ大統領と中国の習近平国家主席による会談の結果、イラン南部での原発2つの建設や、イラン産原油の中国への長期供給を含め、17もの2国間合意が調印された。 イランが制裁措置を受けていた間も、中国政府が、イラン政府との関係を維持し、2011年から2015年までの期間、一昼夜で60万バレルの原油を買付け、無線電信技術や軍事利用も可能な所謂デュアルユース技術を供給し続けた事も、中国に有利に働いたと言われている。それ以外に中国が、商業取引の際に決して政治的諸条件を持ち出さなかった事も、イラン指導部にとって、魅力的だった。
さて、そうした中、日本は、中国の競争相手たりえるだろうか? それは大きな疑問だ。安倍首相のイラン訪問は、得るところの多さという点では、習主席の訪問を越える事は出来ないかもしれない。しかしイランは、大変プラグマチックに、経済パートナーの選択にアプローチしている。いずれにしても、安倍首相の訪問は期待すべきものだ。もしこれが実現したならば、ホメイニ師によるイスラム革命の前年、1978年の福田赳夫(タケオ)氏以来初の、日本の首相のイラン訪問となるからだ。