人民元の切り下げが、世界の株式市場に深刻な影響を与え、中国の主要な株価指数を5から6%暴落させた昨年8月以来、人民元がこれほど上昇した事はなかった。最高指導部や金融当局は、何度か、投資市場を落ち着かせようと試みてきた。中国人民銀行の周小川(ヂョウ・スィヤオチュアン)総裁は、15日に出された週刊経済誌「財新周刊」のインタビュー記事の中で「中国の国際収支は良好で資本流出も正常であり、通貨バスケットに対する人民元レートは基本的に安定している。現在、人民元が下がり続ける前提条件はない」と語った。
「ドルに対し人民元は、下がっているが、ユーロや円、その他の通貨に対しては上昇している。それゆえ総合的に言って、人民元の通貨バスケットに対するレートが、若干上がっているというのが事実だ。近い将来、人民元は、やはり切り下げの傾向にあるだろうが、その事は、下落が続く根拠があるという証明には決してならない。
中国経済は減速し、一方米国経済は活気づいているというのが、ドルに対する人民元の切り下げを決めている主要な傾向だが、中国経済の落ち込みが続くための空間は、あまり広くはない。同様に米国経済が上向きに伸びてゆくための空間も、余り大きくない。それゆえ人民元の対ドル交換レートは、比較的バランスのとれた範囲内に入るだろう。そうした角度から見るならば、人民元が、下がり続けるという根拠はない。」
またロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所のエキスパート、アレクサンドル・サリツキイ氏は「人民元の今後の所謂『健康』についての懸念は、金融市場における新たなグローバルな傾向によって煽られてる」と見ている―
最後にロシア現代発展研究所のエキスパート、ニキータ・マースレンニコフ氏の意見を、御紹介したい。彼は「中国当局や中央銀行は、国の金融システムを安定化させるために、多くの事をしている」と捉えている―
「リスク拡大を測る物差しは、人民元のレートだ。もし、中国の金融システムが現在陥っている状況に対する、人民元の市場での反応が、正常で理解できるものであれば、投資家や観測筋は安心するだろう。多くの観測筋の意見では、中国の金融システムは、人民元が10から15%切り下げられるリスクを秘めている、とのことだ。これはもちろん、世界経済にとってすでに十分なリスクを伴うものだ。それはドルの急騰も意味し、原油やガスを筆頭とした市場商品価格の急激な値下がりをもたらすだろう。中国経済や金融市場に関するそうした気分が、かなり広まっている。中国政府や金融当局が、二つのベクトルの間で妥協点を見つけられるよう望んでいる。一方で、新しい経済モデルに向けた構造改革路線に沿って前進しつつ、他方で、経済がそれほど大きく落ち込まないような刺激策、価格の変動をなだらかなものにし、中国国内のリスクの世界経済への影響を弱めるような市場調整措置を講じなければならない。」