過去の国防費は、主に、武器の近代化レベルの向上や、軍人の生活の質的改善、軍改革の推進に向けられたものだった。最近、中国指導部は、軍の再編の新しい段階に関する決定を採択した。習近平国家主席が発表した大規模な軍改革を現実のものにするためには、多額の予算が必要だ。戦闘準備態勢を現代の要求に適ったものとし、軍部隊の指揮システム全体を立て直さなければならないからである。
中国当局が軍事費を考える際には、考慮しなくてはならない、もう一つのファクターが存在する。習近平国家主席は、昨年9月の軍事パレードのさい演説し、中国人民解放軍の現在の兵員数230万人の削減を明らかにしたが、2017年末までには30万人の兵力削減があると予想される。その際、明らかなのは、この削減が、支出の削減をともなうだろうということだ。その目的は節約ではなく、予算を重要な部門に集中させることにある。あらゆる事から判断して、これまでのあらゆる場合と同様に、削減により主に影響を受けるのは地上部隊で、ミサイル部隊や艦隊、空軍は、基本的にこれまで通りか、あるいは逆に強化されると思われる。改革の本質は、現代の要求に答える中国軍を創り上げる事だ。新しい中国の軍隊は、ハイテク部隊の比率が高く、よい教育を受けた人材からなるものでなくてはならない。従って、人民解放軍の人件費は、今後も高いテンポで伸びるだろう。中国社会における生活水準の向上や、一般の給与の伸びに遅れる事はないと思われる。
もちろん中国は、旧式になった軍備を替え「穴に継ぎをあてる」だけでなく、新しい軍事的な可能性を手にしつつある。現時点で、中国の軍事的な可能性も、また対外政治的な役割も共に、この国が世界経済にとって占めている地位に応えているとは到底言い難い事は、全くもって明らかだ。遅かれ早かれ、このアンバランスは、克服されなけばならない。そのプロセスは、当然で避けられないものとみなすべきである。今後10年の間に、中国は、米国に続いて2番目のスーパー軍事大国になり、恐らくはその後、軍事力で米国を凌駕するだろう。