郵便物や小包を仕分けるソーター、X線装置などの税関機器、複数の建物を横断するコンベアー等のハードを納めるばかりでなく、交換局において最も効率的に仕分け処理ができるように、オペレーションのノウハウも提供している。建物はもともと倉庫だったため、インフラ整備は容易ではなかったが、機器等の設置は2014年末から現在まで段階的に進んでおり、今年の末までに完成する予定だ。
東芝は日本における郵便区分機のシェアの8割以上を占めている。年賀状のように限られた期間に大量のハガキを正確に早く、かつデリケートに機械で区分するのは容易ではなく、メーカーには高い技術力が求められる。海外でもフランスやスウェーデン、シンガポール、セルビア、カナダなどで東芝製の区分機が導入されている。ロシア郵便の国際競争入札では、コスト競争力ばかりでなく、システム構築体制、サービスといった総合力が評価され、導入に至った。
システム導入が決定されるまでには、実に5年以上の歳月を要した。ロシアの郵便事情改善にビジネスチャンスを見た東芝は「必ずニーズがある」と信じ、紆余曲折があってもロシア郵便とのコンタクトを欠かさなかった。2013年、ヨーロッパの企業で長年コンシューマー事業や通信サービスを手がけてきたドミトリー・スタルシノフ氏がロシア郵便の社長に就任し、改革に着手。従来、小包は郵便局まで取りに行く必要があったが、100ルーブルの追加料金で家まで配達するサービスを提供するなど、少しずつサービスも改善され、新たな経営陣の強力なリーダーシップの元、郵便の近代化・多角化がスピード感をもって進んでいる。
近年、世界中で手紙が減少する一方、小包は増加する傾向がみられる。特にロシアでは中国からの荷物が多く、国際郵便の約7割を占める。その多くがネットショッピングの利用によるもので、ロシア郵便は国際郵便交換局での荷物の滞留時間をできるだけ少なくし、スムーズに配達できる仕組みを作ろうとしている。中国からの荷物は梱包状態が良いものばかりではなく、サイズも大小まちまちであることを事前に把握していたため、ソーターもこれらの問題に対応するよう複数の種類が導入される計画である。
ソーターの設置はちょうど折り返し地点にある状態だが、区分能力の向上を通じた郵便物の処理速度改善という点では早くも成果が出ている。ロシア通信情報省のニコライ・ニキフォロフ大臣はモスクワ国際郵便交換局を視察し、「2011年や2012年には、物理的にさばける範囲を超えてしまい、海外から購入した新年用のプレゼントが正月を過ぎても空港に取り残されていることがあった。今ではロシア郵便の配達所要日数は格段に短くなっているし、人々はより頻繁にインターネットで買い物をするようになり、ロシア郵便の配達能力を信頼している」と述べた。
Toshiba RUSの手塚博昭社長は、次のように話している。
手塚社長「モスクワ国際郵便交換局に東芝のオペレーション・システムを導入できたことは、ロシアにおける当社事業の大きな一歩となりました。実際にシステムが稼動して新たな課題が分かることもありますので、それらを日々改良しています。物流ニーズの多様化によりきめ細かく対応し、今後のビジネスにつなげていきたいと思います。東芝は、培ってきた技術力やサービス力で、ロシアのインフラ改善に貢献できる分野が多く存在していると思っています。」