杉本博司氏の立体写真

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杉本博司氏の立体写真 - Sputnik 日本
サイン
モスクワ最大の写真祭「フォトビエンナーレ2016」の特別ゲストは日本の写真家・杉本博司だ。氏の展覧会「今昔三部作」は2日、モスクワにある「マルチメディア・アート・ミュージアム」6階でオープン。5月8日まで続く。代表作の「海景」、「映画館」、「ジオラマ」より20点の白黒作品が展示されている。

ミュージアムのオリガ・スヴィブロワ支配人は会見で、杉本氏の展示は「瞑想のための展覧会だ」と述べている。 「瞑想するためにチベットの山に行く必要はありません。表面的なもののすべて、刹那的なもののすべてから自由になるには、杉本氏の仕事に接すれば十分なのです」と支配人。杉本氏の写真作品の現代性と重要性について、スヴィブロワ氏は次のように述べている。

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「私たちにとりわけ安静の感覚、調和と観照が必要な今このときにこの展覧会が来てくれて幸せなことです。杉本氏の作品は、そうした感覚に私たちを連れ戻してくれる。我々の生きるこの不穏な、慌ただしい時に、杉本氏は我々を、ある種の基本的な真理に沈潜させてくれる。それは、我々の存在は有限であり、他ならぬ調和こそが最も価値があるのだということです」

客たちは長い時間、海の景色の前に立ち、地平線を見つめる。杉本氏の写真に写された映画館のスクリーンから出る、まぶしい光は、人を引き付け、魅了する。秘密は、写真の中央にダイレクトに向けられた天井の電球にのみあるのではない。杉本氏には時間と空間について独自のコンセプトがある。氏は、我々は幻影の世界に住んでおり、真実は、もはや我々のいない場所にある、と言う。「時間から自由になる方法の一つは、それに沈潜することだ」。偉大な日本人アーティストの仕事について、「スプートニク」が訪問者に聞き込みを行った。

クセニア(39)

「気に入りました。まず、写真のフォーマットが効いています。サイズが大きいので、写真と客との間の障壁が除去されます。写真の中にいるような感覚になるのです。一番気に入ったのは「海景」シリーズ。海の写真は穏やかな気持ちにさせます。それは、我々の生きるこの世界では、めったにないことなのです。人がいないことで平和の感覚が生じています。なぜなら人こそ混乱、破壊を作るのですから。それがこの展覧会にはありません。一目見て、これが日本の写真家の写真であることは明らかです。日本の芸術のすべてが簡潔性を目指しているからです」

ワレンチナ(65)

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「米国の自然とカリブ海が気に入りました。残りの写真は気に入りませんでした。馴染みのないもので、美学が異なっていたからです。これが本物の森ではないなどと言うのですか?けれども我々は、生きている、本物のそれだと思っていたのです。海は作りものなどではない、と思いたいものです。なぜ、すべてが白黒なのでしょう。私の考えでは、カラーで写していれば、このアーティストは勝っていたでしょう。このような芸術を純日本的などと呼ぶことは到底できません。我々はこれとは別のものに慣れています。日本の芸術、それはミニチュアの植物であり、墨で描かれた富士山です。下のほうが黒い墨で、頂上が白いのです。こうした自然に添えて発句や短歌を書いても邪魔にはならないでしょう。これが純粋な日本スタイルというものです」

杉本博司氏の展示会をめぐるロシア人訪問者の見解は分裂している。「スプートニク」の耳には、絶賛も聞こえれば、世界的に著名な日本人写真家に対する冷淡な批判も聞こえた。ティーンエイジャーらは杉本作品とジョン・レノンの妻オノ・ヨーコとの類似性を見いだしていた。両写真芸術家とも、写真の古典的なジャンルとはかけ離れているという類似性だ。ヴィクトリアさん(28)の指摘によれば、杉本氏の写真は、写真に似つかわしくない、容量がある。立体的なのだ。しかし、年齢に関係なく、いずれの訪問者も、無関心な様子で、薄明りに浸された展示会場から現実世界へ帰ってくることはなかった。

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