この事実を知った私、アンドレイ・イヴァノフ(モスクワ国際関係大学、国際調査研究所、上級研究員)は先日表した解説「狂った世界は、核戦争の準備か?」にコメントを書き込んでくださったある読者に対し、回答を書こうと思う。
ガガーリンは1968年、訓練飛行中の事故で死亡。1991年、ソ連は崩壊。そして、世界初の有人飛行を果たしたガガーリン、ソ連で生まれた平和共存の理想の両方を未だに敬意をこめて記憶している今のロシアは絶対に世界に対立しようとするはずがない。
残念ながら国際政治の世界で敵のイメージ、または米国人の好んで使う「バット・ガイ」が利用されることは稀ではない。長きに渡り「バッド・ガイ」役だったのはソ連だった。ソ連の指導者らはその初期には世界に共産主義革命を起こすことを夢見、ブルジョアジーを心から震撼させていた。とはいえ、ファシズムの脅威のおかげでブルジョワジーは共産主義者と同盟を組もうと走りよってきたのだが。
ロシアはウクライナが、ユーゴスラビアが、そしてイラクが味わったような運命を背負いたくない。このロシアの抵抗をさしてオバマ米大統領は、ロシアは「ダーイシュ(IS,イスラム国)と同様、平和に脅威をもたらしていると非難したのだ。ロシアと「ダーイシュ」の間の共通点など、意識の状態でもおかしくならないと見出せるものではない。だがこんな意識状態で国際政治を行なうなど恐ろしい話だ。
ありがたいことにテロの脅威が実際にせまったことで米指導部も状況を冷静に見つめざるをえなくなり、シリアにおいてロシアとの協力に踏み出した。だが、無謀極まりないトルコのエルドアン大統領をテロとの戦いに向かわせることはファシズムと戦うよりきついに違いない。だがこの戦いで勝ち、米国が1945年に、そして2015年にもそうしたように、ロシアを自国の最大の敵呼ばわりさせないことが重要なのだ。ロシア自身はこうした役割を求めておらず、この先も米国と協力を行う構えを示している。しかも「ダーイシュ」が壊滅されたところでロシア、米国、その他の人類にとっての本当の脅威というのは残念ながら残存しつづけるのだ。
写真、1枚目はガガーリン飛行士が、クリミアで保養中の日本人女優、故岡田嘉子さんの求めに応じてサイン、2枚目はユーリー・ガガーリン宇宙飛行士、ソ連女優オリガ・レペシンスカヤ氏(中央)と日本人女優岡田嘉子さん(その右隣)と共に。