折しも北朝鮮の弾道ミサイル実験で、地域情勢が悪化している。しかし、日本が核大国になる時期は熟していない。著名なロシア人東洋学者で歴史家のアナトリー・コシキン氏はそう語る。
「個人的に、北朝鮮のミサイル発射や自称核「爆弾」実験にちなむ情勢悪化は、色々あるが、日本人に対し、日本自身が独自の核兵器を獲得する可能性を吹き込む手段であると受け止めている。しかし、それは東アジアの軍事的・政治的情勢の急激な変化につながる、日本の防衛政策上の一大変化となる。それはワシントンからゴーサインが出た場合にのみ可能となる。しかし、朝鮮半島の周辺地域の状況は、米韓が北朝鮮の国境付近で数ヶ月続く大規模演習を行なっていることから、さらに加熱するであろうことが明らかだ。演習は全く緊張を減少させることを目的としてはいない。もちろん、北朝鮮に自制を呼びかけた国連決議を北朝鮮が破ったという事情はあるが、米国、韓国、日本は、もし緊張を緩和する気があるなら、北朝鮮を刺激しないように、合同演習を実施する際には他のエリアを探したほうがよかったのではないか。しかし、日本の一部の勢力には、北朝鮮を刺激することが有利なのだ。日本の軍事力を増大させ、あわよくば核武装させる理由になるからだ。もちろん、普通の日本人は、このプロセスを心配しているが、メディアの影響もあり、情勢悪化の責任の全般を北朝鮮に求めてしまう。しかしこの責任の半分はワシントンにあるのだ」
スプートニク:米国が日本に核武装を許可した場合、一部の日本の政治家に、20世紀前半のような軍事大国の再興という期待を抱かせることはないか?
「今のところはあり得ない話であるが、その可能性を完全に排除することはできない。中国の台頭により、バランスを維持するという高貴なスローガンの下に日本が自分の核兵器を製造する口実が与えられる。ある報告によると、日本は既にプルトニウムや技術を持っている可能性があり、核武装は約3ヶ月で可能だという。よって、一部の米国人政治家や専門家は、米国と日本の軍事競争の再開さえ排除していない。しかし、近い将来の話ではない。米国は間もなく大統領選挙だ。政権には大方ネオコンが残存するだろうが、米国は日本を東アジアの災厄と化することができるような最高の状態ではない。