新しい制裁により、米国国内のあらゆる北朝鮮国有資産が凍結され、米国から北朝鮮への投資および輸出が禁止される。また輸送、鉱業、エネルギー、金融など、あらゆる産業分野の関連資産がブロックされる。
ロシア科学アカデミー経済研究所コリア研究センターのゲオルギー・トロラヤ所長によれば、米韓は長い間、ひとつの視点に凝り固まっている。「北朝鮮政権は弱いので、少し後押しするだけで瓦解する」というものである。氏はさらに次のように続けた。
「北朝鮮をめぐっては、多くの神話がある。代表的なものが、米国の主たる目的は朝鮮半島の非核化、つまり北朝鮮が核兵器を拒否することである、というものだ。実際には、金正恩が核兵器を拒否するつもりはない、ということは、誰にも明らかだ。そして米国の新しい制裁は、国連安全保障理事会の制裁と同様、状況を変えるものではない。ただし、北朝鮮と交渉をする気がある者はいない。同時に、軍事行動もまた、誰の利益にもならない。北朝鮮にとり紛争は自殺行為であるし、韓国にとっては人的犠牲と経済的損失を意味する。米国は真剣に、北朝鮮の核施設に対する「外科的」攻撃というシナリオを検討したが、米国はそうした施設が置かれている正確な場所を知らないのだ。また、このような方法で北朝鮮の核計画を終了させる目的が達成されないことは明らかだ。それで北朝鮮が報復攻撃に出ることも大いにあり得る。米国は明らかにそのようなシナリオに準備ができていない。だから北朝鮮は熱核爆弾実験や弾道ミサイル発射によって緊張を高め、神経戦を仕掛けてきているのだ。こうした条件の下では、国境周辺で局所的な小競り合いが起きることも除外できない。南北が自制できなければ、そうした小競り合いが戦争につながる可能性もある」
「米国は昔から中国周辺のプレゼンスを増大させる計画を持っている。当然のことながら、これは中国から神経的な反応を呼ぶ。しかし、北朝鮮政権を倒すために米韓の軍人が中朝国境に進出するというのは、ホラーの域を出ない話だろう。第一に、北朝鮮がそのような屈辱的な事を許すはずがない。第二に、中国は、米韓軍を近づけるよりは、北朝鮮を庇護することを選ぶだろう」
したがって、軍事シナリオによって北朝鮮問題を解決しようとしても、いずれの当事者も大した利益を上げない。特に米国の物質的、政治的、道徳的な損失は莫大になる。