前羅臼町長の脇氏は1941年国後島生まれ。戦後3年間、4歳から7歳までロシア人とともに暮らした。ロシア人の子どもと仲良く遊んだ記憶は今も鮮明だ。島がソ連に占領された後、日本本土への強制送還が段階的に行われた。脇氏は最後の引揚者にあたる。現在は国後島から約25キロの場所に住み、茶の間から国後島を眺めては望郷の念にかられているという。
東京在住の児玉氏は、歯舞群島・志発島(ゼリョーヌイ島)の出身だ。児玉氏にもやはりロシア人と一緒に暮らした経験がある。あるソ連兵は、幼い日の児玉氏のことをとても可愛がり、児玉氏の一家が送還されるとき、浜辺に立って見送ってくれた。児玉氏は、元島民7000人が少しでも減らないうちに、領土問題を解決し、ロシア人と一緒に暮らしたいという。
児玉氏「故郷に帰れず、本当に悔しい思いをしながら亡くなっていった仲間が多くいます。みな、ロシアが憎いとか、ソビエトが憎いなどとは思っていません。ロシア人と一緒に暮らしたときの記憶はとても大事です。私たちは年をとり過ぎました。私たちにあるのは、故郷へ帰りたいという気持ち、もどかしさだけなのです。」
スプートニク日本のイワノフ編集長は、「両国民の信頼関係醸成のために尽力してきた千島連盟の皆さんの仕事は非常に大事なものです。ロシアの政治家も領土問題を解決したいという気持ちはありますが、難しいのは、領土問題は二国間だけの問題ではないということです。ロシアには、もしロシアが日本に領土を引き渡すとなれば、そこにアメリカが軍事基地などを設置しようとするのではないかという危惧があります。これは問題解決の大きな障害です」と述べた。脇氏も、二国間だけの問題ではないということに賛同を示した。
今年は日露間の要人往来が活発に続く。脇氏は「今までは節目節目で、領土問題が解決するのではないかという期待が、期待だけに終わってしまったという繰り返しでした。今年は安倍総理の5月のロシア訪問、年内のプーチン大統領訪日があるだろうと聞いていますから、やはり問題解決の期待をしたいと思います」と話した。