今まで、広島を訪問した米大統領はひとりもいない。このため懐疑派はオバマ氏は過密スケジュールを理由に広島視察を行なわないという方に傾いている。米国では未だに、広島長崎の犠牲者に悲しみを表すのは合目的的ではないとされている。それは原爆投下が、米軍人の犠牲者をこれ以上出さず、日本の降伏を早めるという軍事上の必然性から行なわれたとされているからだ。
「米国にしてみれば、日本はあの戦争では攻撃していた側であり、最初に真珠湾を奇襲して米国を襲った。この事件はルーズベルト大統領の発言では米国が辱めを受けた日となった。広島長崎の原爆投下に対する米国の原則的な立場はここを起点にしている。だから米国は懺悔もせず、これをこの先も行なっていく構えなのだ。米国はもし自分たちが弱みを見せ、広島長崎を見て欲しいという日本政権の誘いに乗ったら、この先これを日本は米国が罪を認め、部分的に懺悔したととらえるはずだと信じきっている。そうなれば、これは日本人の意識に犠牲の役割だけを植えつけることになるだろうと。だが、日本だってアジアの諸民族に多大な苦しみを与えており、未だにアジア太平洋地域では攻撃国として記憶されているのだが。」
米国は今年、広島でG7サミットを行なうという日本政府の構想にはっきりとノーを表した。それでもこれだけデリケートな問題で自国の最重要連合国を完全に無視することは米国には出来ない。なぜならG7外相サミットはやはり広島での開催が決まっており、そこにはケリー長官も行くからだ。キスタノフ氏は、にもかかわらず日本が今一番重きをおいているのはオバマ氏の広島訪問だと指摘している。
だがもしこれが実現したとしても、公式的なレベルで広島長崎への原爆投下に対して「米国が懺悔」するというテーマを持ち出す人は誰もいないはずだ。米国は「ビッグ・ガイ」としての自国のイメージを壊すことは望まない。それに日本の与党も主たる連合国を怒らすことはしたくないのだ。