安倍首相は24日、総理官邸で、第30回「北方領土を考える」高校生弁論大会で優秀賞を受賞した高校生らによる表敬を受けた。スピーチの中で安倍首相は、若い世代が先祖たちの思いを受け継ぐことが重要だ、と述べた。先日行われた「北方領土」返還をめぐる集会でも、安倍首相は、「問題は肯定的に解決される」と公言。2018年の任期満了までに問題解決に向け事態を前進させる意向を示した。
領土問題の早期解決への確信を示す安倍首相だが、先見の明をもった行動が取れているのだろうか。高等経済学院のアンドレイ・フェシュン氏は次のように語る。
「両国関係の質的向上のきざしが何ら見られない中で安倍首相がロシア訪問やプーチン大統領との関係構築、ロシアとの全面的関係拡大にこだわっていることには、当惑を覚える。なぜ今なのか?なぜ、これほどこだわるのか?私は、この問題は、哲学と心理学の範疇に属し、安倍首相の家族の歴史、さらには、彼の個人的な野心に関連していると思う。安倍首相は、現代日本の一般的な政治家とは、毛色を異にしている。内政についても外政についても、彼のやり方は、既存の政治勢力とは一定程度対立しており、他の政治家からの独立性、独自性を示している。特に、ロシアとの関係改善および領土問題解決に向けた熱い意欲のこもった発言で、安倍首相は既存の政治勢力をひどく苛立たせている。ロシアとの領土問題など簡単に解決できる、などと考えるほど、安倍首相がナイーヴであるとは思わない。ただ、安倍首相は、尋常でなく野心的なのだ。もっとも、日本の政治家としては、の話だが。彼は人と違う。彼の野心が、彼を「最初の人」にする。多数の二国間問題を解決した、最初の人。防衛問題を前進させ、米国からの自立と独立を強め、憲法を変え、領土問題を解決し・・・これらの「最初の人」になる、ということだ」
どうやら安倍首相は、ロシアは今、西側からの孤立、経済減速で、苦しい状態にある、と見ているようだ。今こそ諸島について実質的な議論を進められる待望の機会だ、と首相は感じているらしい。しかし、日本の専門家らですら、このような期待は幻想である、と見ている。もっとも、安倍首相には、領土問題でわずかな前進があれば、それで十分なのだ、とも考えられる。自分は約束を実行するべく全力を尽くした、と有権者に示せるようなものが、なんでもいいからほしい、といったところかもしれない。
たしかにプーチン大統領は、繰り返し、日本と平和条約を締結し、南クリル問題を最も受け入れ可能な形で解決する必要がある、と述べている。たしかに、特に今、ロシアにとって、日本との関係は、きわめて重要かつ必要である。しかしロシアには、そうしたことを領土問題の解決に関連付ける意向はない。