2015年の2月に国際部を立ち上げた際、まず英語と中国語のサービスから始めた。その後まもなくロシア語通訳サービスが追加された。国際部の立ち上げに関わった医事課の島津忠司(しまづ・ただし)課長は、ロシア語通訳サービスを始めた理由について次のように話している。
島津氏「ロシア語通訳者を常勤で置いている医療機関は近隣にはないので、在日ロシア人の方がお困りになっているだろう、数としては少ないながらも、その方たちの利用が増えるだろうと見込みました。今まで英語で対応してきましたが、やはり医療の場ですから、母国語で話せるほうが安心感があります。ロシア人に限らず、外国人の方が言語の壁で不利益を被らないように、安心・安全・平等に医療サービスを受けられるようにと心がけています。他の病院では単なる受付の言語対応にとどまるところもありますが、私たちの病院はホスピタリティを大事にしています。ロシア人の皆様に受診して頂ける体制は十分に整っているので、旅行中何かあったときにも当院を利用してもらえればと思います。」
気になるのは診療にかかる費用だ。健康保険に入っている場合1点あたり10円の計算だが、保険がない外国人の場合は自由診療となり、病院が自由に診療費を決められることになっている。東京高輪病院は保険がない場合、1点20円を受診料としている。大病院が1点を30円で計算する中、これは良心的価格であると言えよう。
国際部のロシア語通訳として働いているのはサンクトペテルブルクに留学経験のある佐川えりか氏だ。既に院内では中国人の患者の次にロシア人の患者が多くなっているため、佐川氏は多忙を極めている。ロシア語の問診表を記入するところから始まり、診察はもちろん会計や薬の受け取りまで患者に同行する。ホームページをロシア語に翻訳したり、病院のFacebookページのロシア語版を作るなど、情報発信にも積極的だ。今のところ在日ロシア人や大使館関係者からの問い合わせが多いが、ロシアからの問い合わせもあるという。また、感謝のメールも多数届いている。
ロシア暮らしの長かった佐川氏は帰国後にロシア語を使える仕事を探していたところ、知人を介して国際部の存在を知った。毎日ロシア語を使う環境だとわかり、すぐに東京高輪病院で働くことを決めたという。佐川氏は「患者さんが、不安に思っていることを充分に医師に伝えられ、自分の不調の理由がわかり、安心して帰っていく姿を見るときが一番嬉しいです」と話している。