モスクワ国立国際関係大学国際研究所主任研究員アンドレイ・イワノフ氏の私見-
中国なしに北朝鮮に圧力をかけるのは無意味であるのは明らかだ。今まさに中国が、北朝鮮の経済が生き残り、現在の政治体制が維持されるための重要かつほぼ唯一の「保障人」となっている。ロシアも自国の役割を果たしているが、はるかに控えめだ。先に中国は、北朝鮮崩壊によって中国へ難民が流入するだけでなく、中国の国境近くに同国の敵である米国との協力を目指す統一された朝鮮の国家が生まれると考え、北朝鮮の同盟国を擁護していた。中国は支援の見返りとして、もし中国の意向に完全には服従しないとしても、中国の指導者たちの賢明な助言に時々耳を傾ける用意を示すことを北朝鮮に期待していた。米国に北朝鮮は人類の脅威の源だど言わせる口実を与えないために、中国が北朝鮮にミサイル実験および核実験を自制するよう執拗にアドバイスしたのは明らかだと思われる。しかし北朝鮮はこのアドバイスを聞かず、中国は最近開かれた国連安全保障理事会で、ミサイルと核実験を行った北朝鮮に対する制裁の発動をロシアと一緒に支持した。西側の政治家や専門家、メディアは、中国は堪忍袋の緒が切れ、事実上中国が北朝鮮指導部に影響を与えることができないことが示されたことに怒った、とういようなことを話し始めた。ここから中国が今、北朝鮮に仕返しをし、彼らを処罰するために、米国が提案する北朝鮮に対する最も厳しい措置を支持するだろうとの結論を導くことができる。まさに今これに期待して、オバマ米大統領は、北朝鮮の金正恩第1書記の悪行に関するワシントンでの協議に、日本の安倍首相や韓国のパク大統領の他に、中国の習国家主席も引き入れることを望んでいる。
安倍首相とパク大統領の立場は予測できる。両氏は、北朝鮮への圧力強化に関する米国の提案を支持するだろう。しかし習国家主席がどのような路線を取るかを述べるのは難しい。もちろん中国は、米国、日本、韓国で大胆な挑発と受け止められている北朝鮮の行動に強い憤りを感じている。しかし中国は恐らく、所謂「北朝鮮の核危機」と呼ばれるものの全てが、2000年代初めに米国によって扇動されたことも理解している。米国の目的は、北朝鮮に軽水炉型原発を建設するというKEDOプログラムの枠内における西側による義務の履行を中止させたり、北朝鮮経済を破壊したり、北朝鮮と韓国が親しくなったり北朝鮮が国際的な孤立から脱出するプロセスを停止させたり、朝鮮半島の緊張を維持したり、また結果として、もちろん対中国を目的とした地域における米国の軍事プレゼンスを維持し拡大するための口実を残すことだった。2008年、韓国では北朝鮮に対して伝統的に疑いを持って接している保守派が政権に就き、米国は先に挙げた目的を遂行するのがずいぶん楽になった。それらが韓国の国益に反しているにもかかわらずだ。またこれらは中国の利益にもならない。だが中国は韓国と違って、自国の国益に反して米国側でプレーすることは恐らくないだろう。