モスクワ国立国際関係大学国際研究所主任研究員アンドレイ・イワノフ氏の私見-
情勢によく通じている世界の主要大国の首脳である安倍首相が、まさにポロシェンコ大統領がミンスク合意の履行を頓挫させているのを知らないはずはない。しかし経験豊かで礼儀正しい人物である安倍首相は、これを声に出して述べることができなかったのだ。だが安倍氏が今後、ウクライナの政治家たちの甘い言葉ではなく、現実に基づいてウクライナとの関係を構築しなければならくなるのは明らかだ。
次は不快なものについて触れる。現実は次のようなものだ。例えば、オランダで6日、EUとウクライナの連合協定の是非を問う国民投票が実施され、反対票が多数を占めた。ウクライナに対するこのようなネガティブな反応は、他の欧州諸国でもさらに顕著になっている。なぜなら欧州の人たちはウクライナについて一般的な日本人よりもはるかに多くの事を知っているからだ。EU加盟国や米国の政府の管理下にあるメディアの強化にもかかわらず、欧州の人たちは、2014年2月のキエフでのクーデターや、横領、汚職、民主主義侵害の疑いが持たれた当時のヤヌコヴィチ大統領が逃亡した後、ウクライナ政権が今も変わらず腐敗していることを理解し始めた。ウクライナでは民主主義も高まらなかった。反対に数千人が刑務所に入れられ、ウクライナの新たな「民主的」政権を批判したとして数十人の野党活動家が殺害された。ウクライナ経済は崩壊した。クリミアの住民は、クミア半島と一緒にロシアへ逃げ込んだ。ウクライナ東部ではポロシェンコ大統領が戦争を開始した。公式情報によると、この戦争では約1万人が殺された。これらの現実は、果たしてウクライナとEUの連合協定がEUに恩恵をもたらすのだろうか?という疑いを欧州の人たちに抱かせている。欧州の人々は、新政権によって破壊されたウクライナから、飢えて怒り狂った大勢のフーリガンが欧州へ流れてくるのを恐れている。しかもそれらのフーリガンの多くが、ナチス・ドイツの共謀者たちを崇拝し、ドンバスで殺害の経験を持つウクライナ国家親衛隊のメンバーだ。さらにウクライナ領内にテロ組織「ダーイシュ(IS、イスラム国)」の戦闘員を訓練するキャンプがあったという最近伝えられたばかりの情報も、欧州の人たちに衝撃を与えた。