今日の朝鮮半島の緊張状態を考えると、ノドン新聞の記事内容はどこか普通ではないわけではない。なぜならば北朝鮮は以前にもこのことを再三に渡って公言してきており、トクト諸島に対する日本の立場を批判してきたからだ。そしてこの記事が今発表されたということも、おそらく、偶然のことではないだろう。ロシア科学アカデミー、極東研究所、朝鮮調査センターのキム・エンウン氏は、記事は韓国への接近を目的として出されたシグナルではないかとして、次のように語っている。
「北朝鮮は常にトクトは韓国の領土だと主張してきたが、これが北朝鮮領だといったことは一度も無かった。先週、韓国では議会選挙が行なわれ、政権与党が手痛い敗北を帰し、議席数の獲得では1位ではなく、2位となってしまった。これはセヌリ党の敗北にとどまらず、パク大統領と彼女の行なってきた政策が敗北したことを示している。これには南北朝鮮分野の政策も含まれる。
パク氏は大統領就任当時、北との信頼、ユーラシア・イニシアチブの回復を目指していたが、これは今すべて、現政府によって葬り去られている。経済協力もならなかった。これに付け加えてケソン工業団地まで閉鎖された。これは北と南を経済分野でつなぐ最後の細い糸だったが、それが切れてしまった。交流のあらゆるラインが閉じられてしまった。これを韓国国民が議会選挙で考慮したとも考えられる。だから政権与党に与えられた票がこんなにも少なく、逆に政権を批判する候補者が著しく多い票を獲得したのだ。
この状況で北朝鮮はおそらくなんらかの意図をもって、もし韓国が立場を変えるのであれば、北は対話と協力に戻る用意があるという提案を行っているのではないだろうか。」
北朝鮮では日本は依然として「過去に犯した罪を物語る」事実を否定しており、自分が指導的立場を演じる「大東亜共栄圏を打ち立てるという昔の夢」を捨てきれていないと捉えられている。
キム・エンウン氏は日本を批判するという立場では南北朝鮮は結束しているとして、さらに次のように語っている。
「日本批判という点では南北朝鮮の立場は、現時点での両国関係がどうであろうとほぼすべて一致している。第一に、日本が植民地時代および第2次世界大戦中に朝鮮人や他のアジアの民族に対し侵した罪を無かったことにしようとしているとして、南北はそろってこれを批判している。南北朝鮮は、日本で先にいわゆる集団安全保障に関する法律が発効したことから、この国の軍国主義が再び自分たちを侵略するのではないかという危惧感を表しているのだ。」
キム氏は、南北朝鮮の市民が特に憂慮している点は今の日本がすでに本格的な軍事力を持ち、核ミサイルを製造しているとして北朝鮮を非難しながら、自分も非常な短期間に自前の原子爆弾、弾道ミサイルを製造する能力を有しているということだと指摘する。キム氏は、軍事強国として日本が復活するという恐怖、そして日本の植民地支配時代についての共通の記憶が原動力となり、南北朝鮮を接近させるのではないかとの見方を示している。