モスクワ国際関係大学、国際調査研究所の上級研究員、アンドレイ・イヴァノフ氏は同会議に参加した印象を次のように語っている。
米国はご存知の通り自流の統合プロジェクトを操作している。TPPもその一例だ。日本はTPPに参加することで米や豚肉、自動車の生産に損失を蒙る恐れがある。韓国はというと、現段階ではTPP加盟を決めかねている。ソウルにある漢陽(ハニャン)大學校のアジア太平洋調査センターのオム・グホ所長は韓国の抱える憂慮について、TPPに加盟したがために北朝鮮との協力が難しくなり、ユーラシアでの統合プロジェクトへの参加ができなくなるのでは、ということにあると語っている。
一方でユーラシアでの統合プロセスは勢いを増している。中国の「シルクロード経済ベルト」というイニシアチブに答え、モンゴルのエルベグドルジ大統領はロシア-中国-モンゴルという3者フォーマットの開始を提案した。モスクワ国際関係大学、東アジア・上海協力機構調査センターのイーゴリ・デニソフ氏は、モンゴルのイニシアチブの目するところは隣国のうまみを利用し、モンゴル国内市場での彼らとのライバル争いを避けることにあるとの見方を示している。
ロシア戦略調査研究所、アジア中東センターのボリス・ヴォルホンスキー副所長は、ユーラシアにおける紛争がまさに中国、ロシア、インド、パキスタン、イラン、中央アジアの統合プロジェクトが実現され、交差している場所で起きているというのは決して偶然ではないと語る。ヴォルホンスキー氏は、ロシアはアジア太平洋地域の統合プロセスにアクセスする上で、それをロシアの進めるシベリア、極東開発プロジェクトとリンクさせてコンセプトを策定する必要があること、さらにロシアは、中国の新シルクロード構想やロシアと上海協力機構の行うユーラシア経済圏のプロジェクトなど、「垂直方向」のプロジェクトにとどまらず、ロシア、イラン、インドの参加する南北を貫く「垂直方向」のプロジェクトにも参加することが肝要だと指摘している。
会議では、露中の率いるユーラシア統合プロジェクトの目的は米国を孤立させることにあるのではなく、大小の諸国の国益が平等に考慮される、より公平な世界秩序の構築にあることが指摘された。