上智大学の上野俊彦教授は、実際に具体的な経済交流が進展しなければ評価はできないものの、日本が経済協力プランを提示したこと自体は、EUへ与える波及効果が大きいと見ている。また、今後山口県で開催されるかもしれない日露首脳会談についても、互いにじっくり話せるメリットがあるとの見方を示した。
スプートニク:安倍首相がロシア側に提案した8項目の二国間経済協力プランは、ロシアにとって「良い手土産」となったでしょうか。
上野教授「経済制裁と原油価格の値下がりによって、2014年後半以降、ロシア経済は低迷状態が続いています。とくに最大の経済的パートナーであったEUとの経済関係が経済制裁により悪化したことが大きい要因です。そうした状況下での、日本からの経済協力プランの提示は、ロシア側からすると好ましいものと受け止められているでしょう。実質的な効果は具体的に経済交流が進展しないと評価できませんが、欧米諸国が経済制裁を行っている中、日本が首脳会談において経済協力プランを打ち出したことは、水面下ではロシアとの経済関係の復活を待ち望んでいる国が多いEUが対露経済制裁を緩和する突破口となる可能性もあり、そうしたシンボル効果あるいは波及効果が大きいと思われます。」
スプートニク:外交筋によれば、ソチの日露首脳会談の際、安倍首相はプーチン大統領に地元・山口県での首脳会談を提案し、プーチン大統領もこれに応じる構えを見せたということです。その狙いは何なのか、あえて地方での会談を選択する意味は何でしょうか?
上野教授「非公式会談ということであれば、地方で行うことは珍しくありません。たとえば、橋本エリツィン会談が伊豆の川奈で行われた前例もあります。G7サミットも、大都市ではなく地方都市やリゾート地で開催されるという傾向があり、実際、伊勢志摩サミットもそうです。安倍首相はプーチン大統領の郷里のサンクトペテルブルクで首脳会談を行っているので、今度は自身の郷里である山口で、というのもバランス的には悪くない提案だと思われます。東京以外の場所で、くつろいだ雰囲気でじっくりと首脳会談を行うことができるというのが地方開催のメリットでしょう。」