印象主義には、事実上、19世紀終わりから20世紀初めのロシアの画家のほとんどが強く引き付けられた。美術館の展示品の中には、パレノフ、コロヴィン、クストヂエフ、グラバーリ、ユオン、コンチャロフスキイ、ピメノフなどロシアの傑出した画家達の作品、70点以上が含まれている。これらの作品は、直接的な意味で言えば「印象派」に属するものとは言い難いかもしれない。しかし作品は、公に認められている原則に従ってではなく「印象派の気分」を持っているかどうかで選ばれた。例えば、ロシアを代表する画家のひとりワレンチン・セロフの場合、「窓」という一つの作品だけが選ばれている。この絵は、美術館の創設者で、文化活動の積極的支援者である企業家のボリス・ミンツ氏の大のお気に入り作品の一つだ。なお美術館に展示されている絵の大部分は、ミンツ氏自身の個人コレクションである。
彼は、ロシア流の印象主義について次のように考えている-「あまり研究されておらず、過小評価されている。それゆえロシア文化にとって、また芸術を愛する人々にとって意義のあるプロジェクトを作りたいと望んでいる。」
美術館を組織した人々は、最も目の肥えた観客も驚かせるようなものを作り上げようと真剣に努力した。入り口には、創作の過程をビジュアルに示す米国のジャン=クリストフ・クーエのモニュメンタルな作品が置かれている。1階から3階まで広がる巨大スクリーンには、最新テクノロジーの助けを借りて、驚く観客達のまさに目の前で、見えない筆によって一筆ごとに傑作が生まれてゆく。
また音楽も、この美術館の言わば「名刺」代わりになると思われる。これは、ロシアの現代作曲家で、つい最近、オペラ「ノスフェラトゥ」で演劇界にショックを与えたドミトリイ・クルリャンツキイ氏が作曲したものだ。彼は、美術館のために特別に、ミュージック・コンポジションを作ったが、その元に置かれたのは、美術館の主な5つのコレンクション、つまり、セロフの「窓」、クストヂエフの「ヴェネツィア」、コンチャロフスキイの「ディナモ・リンク」、ユオンの「ロストフのクレムリンの門」そしてピメノフの「雨に濡れるポスター」から彼自身が得た印象だった。
なおオープン前に、美術館は、ロシアにおける印象主義の起源調査に関する学芸員らの入念な仕事ぶり、人々にあまり知れていない画家の発掘、さらにはロシア国内そして国外における印象主義絵画の紹介活動などが評価され、国際博物館会議のメンバーとして、正式に受け入れられた。