代表団のメンバーの中にはオーストラリア軍事情報局長・オーストラリア国防次官を勤めたオーストラリア国立大学(ANU)戦略防衛研究センター名誉会長にして名誉教授ポール・ディッブ氏がいた。ロシアのリベラル系ラジオ「モスクワのこだま」とのインタビューで、彼は、オーストラリアはオーストラリアの市民数十人が死亡した2014年の夏の悲劇の原因に関しロシアと異なる見解を持っていること、クリミアのロシアへの返還、ドンバスにおける事象におけるロシアの役割をきわめて 否定的に見ていること、を明らかにした。しかも米国の反ロシア制裁を支持しているオーストラリアとロシアは、それにもかかわらず協力のポイントを探すべきだ、と同氏は言う。
「オーストラリアは、地域の他の多くの国と同様に、非常に重要で深い経済関係を中国と持っている。しかし、同時に、安保分野において、米国と非常に密接な関係を有している。同時に、オーストラリアは中国に経済的に依存しすぎたり、米国に安全保障面で依存しすぎたりしたくはなく、これら2つの重要な分野での協力を多角化しようとしている。オーストラリアはおそらく、中国とかなり高度な安全保障協力を既に持っている唯一の西側国家であり、特に、我々は中国との合同演習を多年にわたり実施している。我々は経済および防衛上の利害の対立を避けたく、我々はそれに懸命に取り組んでいる。さらには、今後時間をかけて、ロシアをそこに含めることによって我々の経済、防衛協力の多角化を進めたいと考えている」
代表団メンバーのオーストラリア国立大学ヨーロッパ研究センター客員教授カイ・ウィルソン氏は、ここ数年のロシアへの関心の高まりを、ロシアの東部地域の開発が成功していることで説明している。オーストラリアはこのプロセスに参加し、そこから経済的利益を得たいと考えている。
オーストラリアはまた、米国の推進する環太平洋パートナーシッププロジェクトでの協力に対しても、実践的なアプローチをとっている、とマイケル・ウェスリー氏は述べている。
「私たちは、TPPは非常に重要な合意であると考えているが、我々は、これが完全な合意であるなどという幻想を持ってはいない。中国という、私たちの主導的な経済パートナーが含まれていないので、完璧ではありえないのである。我々はTPP合意のメンバーであることに満足してはいるものの、これがゲームの一部に過ぎないことは理解している。オーストラリア人はアメリカ人とは非常に異なっている。中国はアジア太平洋地域に自由貿易圏を創設することを提案し、アメリカ人は反対しているが、我々は中国を支持した。そして、我々は、経済ブロックと政治的競争における合意を利用することはオーストラリアの国益に叶わない、と米国に通告した。我々は、自由貿易および投資に関する合意は開かれたものであるべきだという立場だ」