そんななかの1社、JALも前代未聞のオファーを展開。この夏、ウラジオストクないしはハバロフスク発東京行きのチケットを買った観光客には、東京から大阪、名古屋、福岡、札幌、沖縄に無料で飛ぶことのできる特別タリフが提供された。東京から先の観光地までのチケット代がただになることで、例えば沖縄までの往復チケットは300ドルから800ドルという破格になる。この他にも日本の30都市へのチケットがものすごくお得な値段でオファーされた。
日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部ロシア担当のヴァレンチン・シェスタク氏は次のように語っている。
「2015年、ロシアからの日本へのパックツアーは15%落ち込んだにもかかわらず、現在それは徐々に回復してきている。今年に入って最初の4ヶ月間だけで日本へのロシア人渡航者の数は1万7200人に達した。これは日本への流れは拡大するだろうと予想する十分な根拠となっている。日本の航空各社、ツアーオペレーターらはこのために多くの尽力を尽くし、一番魅力的なプログラムを開発してくれている。」
日本がロシア人観光客の拡大に関心を示していることは5月末、ウラジオストクで開催された太平洋国際観光展(PITE)に出展した日本の観光会社の数を見てもわかる。前回の開催に比べ、以前は影の薄かった日本の県からの出展が目立って増えた。興味深いことに、マスコミがロシア大統領の東京訪問について報道しはじめたとたんに観光展への出展者の数がいきなり増えた。これは実業界が政界の雰囲気がホットになったことに瞬間的に反応したからに他ならない。
それでもロシア人観光客獲得にしのぎを削る日本の観光各社には強力なライバルが存在する。中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、マカオ、グアム、豪州、ニュージーランドといった地域諸国だ。この圏内での格安ツアーにはクルージングも切り込んできた。
「ブリーズライン」社のベンヤミン・サポジニコフ代表は「クルーズといえば常に高くつき、あまりに豪華というステレオタイプは過去のものになりつつある」として、次のように語っている。
「今の、この経済危機の時代にクルージングは一番お得なバカンスとなっていることは、かなり懐疑的な人でも認めざるを得ない。クルージングだと他の都市、他の国へと移る移動費や食費、ホテル代、娯楽費が節約できるからだ。ヨーロッパ向けのクルージングは安売りではわずか400ユーロで買えるし、アジア向けルートだと300ドルからある。」
ロシア人旅行客のインバウンドに従事する外国の観光各社には実はもっと強力なライバルがある。それはロシアの国内観光だ。ロシアの国内観光はここ数年、ずっとパワフルになってきている。自然、気候条件に富み、多様な文化遺産を誇るロシアの国内観光は将来性が非常に高い。ただしロシア国内観光を競争力の高いものにするためには一層のプライスカットや、外国より快適な条件作りに取り組む必要がある。