東大のロシアにおける協定大学はひとつしかなかったため、ある意味行き先の選択肢はなかったのだが、サンクトペテルブルグ大学では東洋学が盛んに学ばれており、李さんの興味の対象とも一致した。李さんのインタビューの抜粋をご紹介しよう。
李さんが取った授業の中で面白かったのは、意外にも全部、語学だった。李さんは、ロシア語はもちろんだが、東大では学べないタジク語と、ペルシア語を受講していた。厳しさの中にも、面白さがあったという。
李さん「基本的にロシアの大学は厳しいです。日本の大学で少数言語の授業の場合、自分の科目を生徒が取ってくれたことに対して先生が嬉しくなって、ちょっと甘くなったりすることが往々にしてあると思います。こちらの先生は、『国家に寄与する存在』を養成するために徹底して教え、宿題を出し、それでもできなければ退学させます。」
ロシアでの慣れない生活、しかも寮での外国人たちとの集団生活は大変なものだが、メリットもあった。ロシアでは意外なものが安いのだ。
© 写真 : 李優大李優大さん
李優大さん
© 写真 : 李優大
李さん「ロシアの通信事情は日本よりも勝っていると思います。電波の状態も日本と同じくらいです。カフェに行けばどこでも、コーヒーさえ買えば無料でWI-FIが使えますし、スマートフォンの通信料は、日本と同内容のプランで月額250ルーブル(6月23日現在のレートで約400円)です。公共交通、物価もとても安いです。日本とロシアの所得の差という要素を差し引いても、それでも安いですよ。じゃがいもは、ペテルブルグなら1キロ20ルーブルくらい(約30円)です。」
東大生だからといって勉学のみに励んでいるというわけでもない。美しきロシア人女性達との関係について、李さんは「うまくいったこともあったが、それと同じくらい色々失敗もした」と述懐する。
李さん「ロシア人には『付き合う』という定義がないんですね。日本だと、『お付き合いしてください』『はい、わかりました』なんていう約束事がありますけど、ロシアではそれがないんですよ。何かこう、流れで…。そういう手続き的なものが無いことは、僕にとっては良いと思いましたね。」
寮でのトラブルをはじめ生活面での苦労も絶えなかった李さんだが、ソ連時代の文献を読んで大学院への進学を視野に入れた論文も書き上げ、ロシア語能力の試験でも高い成績をおさめるなど成果を残した。留学は李さんにとって、精神修行にもなった。李さんはロシア留学を考えている学生に対し「ロシアに来る前に、それなりの語学力をつけておかないと最初が大変」なので、日常会話程度は話せるように早めに勉強しておくようアドバイスしている。
李さんのフル・インタビューはサウンドクラウド「トーク・雑談」コーナーの「ロシアに住む日本人とおしゃべり:東大生がロシア留学してみた」をお聴きください。