「国務委員会という名前自体、中国の機関を思わせる。しかし原則的に、権力機構内には、本質的ないかなる変化も生じなかった。委員長の任期は5年間だが、金正恩氏の今後の再選を決して妨げないだろう。実際のところ起きたのは、名前の変更だけで、これは若い金正恩氏が、自身のもとで機構再編した事と関係がある。国防委員会は、大祖国戦争の時期、スターリン時代のソ連にあったような戦時の国の指導機関だ。この名称には、戦時指導部のための非常機関といった印象がある。名称から『非常』という言葉が取られたのは、北朝鮮国内の状況が、比較的安定したからで、制裁は課せられているものの、大したものではない。北朝鮮指導部に大きな注意を払うよう求められているのは、経済的向上という目標である。」
国務委員会のメンバーには、副委員長として、労働党政治局常務委員の黄炳瑞(ファン・ビョンソ)副元帥、朝鮮労働党常務委員で党副委員長の崔竜海(チェ・ヨンヘ)氏及び同じく常務委員で首相を務める朴奉珠(パク・ボンジュ)氏の3人が任命された。
会議で、国の経済路線に関する報告演説をした朴首相は、自分達の力に立脚する「チュチェ」の思想を基盤に、経済発展と核抑止力強化を平行して進めるという方針に忠実であることを確認した。
報告の中では、国民生活のレベル向上のため、農業や軽工業により多くの注意を割き、世界市場で競争できる質の高い製品の製造を確立する必要があるとの立場が示された。
「これは、工業と農業における注意深い改革に向けた朝鮮労働党の路線を強化することだ。また、最新ハイテク軍事兵器で韓国を追い抜くために予算を意味なく浪費する代わりに、現実的でもっと安価な核ミサイル分野に重きを置いた非対称的な対応である。これは、決して攻撃のためではなく、防衛というよりむしろ抑止のために必要だ。核弾頭とその運搬手段が北朝鮮に存在することは『せっかちな若干の人達』にとって、思いもかけないこととなった。北朝鮮を殲滅させるには、90分あればよいなどと言われていたが、そんなものはハリウッド映画的結末を持った戦争映画の話であって、本来戦争は長くうんざり続くものであり、ほかの国の領土にも飛び火し、多くの人々が悲惨な最期を遂げる。世論は、そうしたものを良しとはしない。北朝鮮でも、その事はよく理解されている。」
今回の北朝鮮での最高人民会議は、金正恩氏を党委員長に選んだ5月の朝鮮労働党大会の後に行われ、金正恩氏のもと権力機関が今後も一つにまとまってゆくこと、「唯一指導体系」強化を裏付けるものになっている。金正恩氏は、以前も党を率いてはいたが、第一書記の肩書だった。現在は朝鮮労働党委員長である。なお朝鮮人民に対する父金正日氏の功績を考慮して、総書記という肩書は永久に彼の父のものになっている。そして今回、党の最高ポスト以外に、金正恩氏は、北朝鮮に長い間存在しなかった、そしてどこか中国の国家主席に似た国務委員長という肩書を得た。なお金正恩氏は、さらにもう一つ、朝鮮人民軍を率いる、元帥の称号も持っている。