ロボット工学がどのように新たな分野で利用されているかについては、ほぼ毎週のように多様な国から情報が入ってくる。パーソナルアシストロボットは病気やハンディキャップを有する人のリハビリのため、すでに広く利用されている。産業ロボットも大量に存在する。さらに、ドローン(スマート無人航空機)やスマート3Dプリンターなどもある。ロボットは作詩作曲や、絵を描くこと、ツアーガイドを行うことを学習した。ロボット掃除機や、ロボット芝刈り機にはもう誰も驚かない。そして人をルーティーン作業から解放するアシストロボットは毎年増える一方だ。このように急速なテンポで発展するロボット工学同様に勢いよく伸びているのが多くの国で開発されている戦闘ロボットだ。戦闘ロボットを使った軍には敵を生身の力ではなく知能の力で倒すことが可能となる。
大多数の人はロボット化が進むことにより通常の雇用が減少するのではと危惧しているが、モスクワにあるイノベーションセンター「スコルコヴォ」のゴル・ナハペチャン顧問は問題は別のところにあるとして、次のように述べている。
「ロボットが身につけることができる多くの職がある。ロボットが人間の代わりにこの職につくと、人間には何かを創造する可能性が与えられる。ロボットが代わりにつくこれらの職はほぼすべての退屈な作業で高い技能は要求されないが、正確さと忍耐力が必要という仕事だ。他には、もちろん、危険な条件での仕事も含まれる。たとえば、遠い宇宙に人間を送ることは、もしロボットが代わりになれるなら、命を危険にさらしてまでする必要はない。
問題は別のところにある。たとえば、こんな例だが、もしあなたの冷蔵庫がオンラインモードであなたがどのような食材を使っているかという情報を送り、ロボットシェフがあなたにご飯を作るならば、あなたの食の好みについての情報は巨大企業の巨大サーバーに送られることになる。そして、この情報を集め分析する人が現れるだろう。。。つまり、人の私生活はプライベートなものではなくなるのだ」
「誰かが考えているよりも、実際にはリスクは近くにある。
すでにニューラルネットワークや自動運転車が現れている。そして、倫理的な問題も起こっている。もし無人自動車の前に突如として、ある道にはおばあさんと子どもが、もう一つの道には5人の人間がいる、といった障害が現れたならば、無人自動車はどうするか?プログラムとしての人工知能は短期間で人間の能力を超える可能性がある。その先は人間を根絶する、もしくは人間を『間違った方法で庇護する』危険性がある。これはいわゆる『ペーパークリップ・マキシマイザー』という筋書きで狂ってしまった自動機械はペーパークリップの他には何も興味を持たず、あらゆるものからクリップの山を作るというものだ。
また、自己複製する能力を持つナノロボットも危険な可能性がある。これはすでに医療分野の話で、そのナノロボットは機械と生きた細胞の中間的な存在といえる。アメリカの学者エリック・ドレクスラー氏は、プログラムが止まらなくなり、ウイルスのように、出合ったもの全てを自らの構成要素に分解し、その構成要素から自らのコピーを作り続けるという危機のシナリオを描写した。人体や生物圏など、すべてはナノロボットにとっては構成材として使えてしまう。別の想定では誰かが軍事目的で敵のところへナノロボットを投げ込んだとすると、ナノボロットは増殖し始め、それは制御不能となるだろう。」
これは黙示録的な構図だ。しかし、トゥルチン氏によると、今日の時点ではナノロボットや人工知能よりも、核と生物兵器のリスクのほうがまだ圧倒的に現実的だという。