クユンさんはソビエト時代、建築学を学びにモスクワへ留学し、そのままモスクワへ残った。現在はモスクワにある食品関係のベトナムの会社で働いている。やはりソ連に留学していたベトナム人男性と結婚し、2人の子どもがいる。水彩画が趣味で、これまでたびたび展覧会を開いていた。
クユンさんの言葉によれば、クユンさんと手まりは運命の出会いを果たした。1年ほど前、日本人男性と結婚した友人の写真を偶然目にしたとき、そこに手まりが写りこんでいたのだ。この綺麗な丸いものは一体何なのか?と頭から離れなくなり、クユンさんは手まりについて調べ始めた。手まりという名称はロシアの検索サイトで知った。
それからというものクユンさんは、仕事や家事を終えてからの深夜の自分の時間を、毎日手まり製作に費やした。インターネットの動画を見て自習し、経験ゼロの状態から、8か月間で120個の手まりを縫い上げた。驚くべきはそのクオリティだ。クユンさんの手まりは、独学で作ったとは思えないほど素晴らしい出来栄えだ。伝統的な日本のモチーフを用いたものもあれば、鳥や虫をデザインしたもの、洋風にサンタクロースをあしらったもの、ロシア帝国のイースター・エッグ風のものもある。クユンさんによれば手まりの魅力は、「手で縫うことによってのみ表現できる美と色の融合」だという。
クユンさんは日本に行ったことはないが、日本人の精神性に共感する部分が多く、日本との縁を感じている。
クユンさん「日本の文化をとても身近に感じます。日本人は、あらゆる事柄に対して非常に注意深く、責任をもっています。もし日本人が何か始めたら、彼らはその仕事に対して、最高の点までクオリティを高めようとします。これは私もそうです。もし私が何か始めるなら、それをよく研究し、自分にできる全ての努力をして、完成に近づけられるよう力を尽くします。手まりも、そのうちの一つです。」
クユンさんは、ゆくゆくは地球をモチーフにした特大サイズの手まりを作り、ロシアや日本やベトナムを手まりの中に描き出したいと考えている。その手まりには、世界が平和であるようにとの祈りをこめるつもりだ。
先に伝えられたところによると、第8回国際ロシア語俳句コンテストに2500作品の応募があった。