その最も分かりやすい例が、英国のタイムズ紙だ。タイムズは自社の見解を表しただけでなく、ロシア代表選手全員の五輪参加禁止をほぼ最後通告的に求める書簡をIOCに送った。書簡は、新聞社の指導的立場にあるスポーツ記者の署名付きで掲載された。また英ガーディアン紙は社説で、「リオはペテン師のための場所ではない」とのきっぱりとした声明を表した。アイルランドのジャーナリスト、ダニエル・ライアン氏は、RT向けに書いた記事で、もし事の本質にかかわる「but」が一つもなければ、これは公正だったかもしれない、と指摘している。ガーディアン紙は、ロシア人選手全員の排除を願うことで「クリーン」なロシア人選手全員の処罰を呼びかけた。
なお幸いIOCの決定は、「スポーツは政治を超越する」という原則に基づいたものとなった。そのためIOCはロシア代表に関する声明の中で、大会に参加する重要な基準として選手たちの完全なる「クリーンさ」に重点を置いた。
「ロシアは、クリーンなスポーツ選手たちに2016年リオ五輪への参加を許可するというIOCの決定を歓迎しています。オリンピックのために選ばれたロシア人テニス選手8人は、外国での検査で何度も最も厳しいアンチ・ドーピング・ プログラムを受けました。2014年の合わせて205のサンプルが同プログラムに加えられました。IOC理事会の決定による現在の最も厳しい要求にこたえるためにはこれで十分だと思っています。テニスのロシア代表メンバー8人全員がオリンピックに出場します。なぜならリオ五輪への参加資格を得たロシア・テニス連盟の選手たちの中に、マクラーレン氏の活動報告で名前が挙がった選手は1人もおらず、誰もドーピングスキャンダルで信用を失墜させなかったからです。」
タルピシェフ氏は、ドーピングスキャンダルを受けてロシアのクリーンな選手たちはオリンピック開幕を前に今どのような気分でいるのか?との質問に、次のように答えた-
「私達は、ロシア人選手たちのようにかつてドーピング問題を抱えていた世界的に有名な選手を含む外国人選手たちがオリンピックに出場するのを知っています。少なくとも彼らは落ち着いてオリンピックに参加しています。
なお外国では全てのマスコミがIOCの決定にネガティブな反応を示したわけではない。NHK は25日、日本が誇る体操男子のエース内村航平選手が、ロシア勢が国ごとリオ五輪から排除されなかったことについて、「ドーピングをした選手は、永久に試合に出場できなくても文句を言えないと思うが、それが飛び火して、努力をして勝ち取った権利を持つ選手が、オリンピックに出られないのはおかしいし、かわいそうだと思っていたので、出場できることはよかった」と語ったと報じた。
イタリアのメディアも、IOCはラジカルな決定から逃れて妥協の道を選ぶことができたとの見解を取っている。伊紙コリエーレ・デラ・セラは、なぜならロシア代表全員の排除はまことに恥ずべきものとなったはずだからだと報じている。伊紙La Stampaも同じように、「IOCは、一つの国全てを排除することができなかった。あまりにも多くのクリーンな選手たちが不当に処罰されるところだった。しかしもしIOCがオリンピック・ムーブメントにおけるドーピングの事実を隠した人々を実際に排除できるならば、ロシア人選手のみの排除に限るのはあまり意味がない」とコメントしている。