宮城県経済商工観光部・海外ビジネス支援室の高橋征史(たかはし・まさし)室長補佐は、ロシアビジネスを支援する理由について、豊富な天然資源のある「ロシアのポテンシャルの大きさ」を挙げ、「ロシアは可能性のある国。今後、経済制裁が解除されれば、ロシアのGDPは間違いなく伸びていくだろう」と期待を見せる。
お茶の井ヶ田株式会社は、抹茶やずんだを使用した仙台の定番スイーツ「喜久福」で有名だが、今回ロシアに向けて展開していくのは、お茶やお菓子ではなく、同社が手がけるスキンケアコスメ「茶結肌(さゆき)」シリーズだ。一番茶の潤い効果に着目し、お茶の美容成分であるビタミンC、カテキン、カロテンを配合しており、老化防止が期待できるという。お茶の井ヶ田株式会社が海外展開するのは、これが初めてだ。高橋氏によれば、「海外進出第一号としてロシアに展開したい」という同社の意気込みは、選考過程においてプラスになったという。
宮城県の村井嘉浩知事は、2009年5月にロシア・ニジェゴロド州を訪問し,ワレーリー・シャンツェフ知事と貿易、学術・技術、社会、文化の分野での「協力に関する協定書」に調印している。
今後は、ニジェゴロド州で商品の展示会を行ったり、モスクワで10月に予定されているコスメの祭典「インターチャーム2016」にも出店する見込みだ。まずはモスクワの富裕層が通うスパやサロンといった場所でプロに使ってもらい、その後、個人消費者向けに販売することを視野に入れている。
宮城県はこれまでにも、米やいちごなどの県産品をロシアに展開させる事業を支援してきた。昨年度の支援対象だった登米(とめ)の宮城米は、モスクワの日本食レストラン「誠司」で、採用されることになった。誠司は政財界の関係者も多く訪れる、VIP御用達の高級レストランである。いっぽう、一昨年前に支援対象だった、東北一の生産量を誇る亘理(わたり)のいちごの輸出を試みた際は、空輸の際の温度管理が非常に難しく鮮度を思うように保てなかったという。しかし生産者はこれを悲観するのではなく、ノウハウの蓄積と捉え、既に次のプロジェクトが進んでいるという。
日本におけるロシア進出を支援する試みは、ロシアが経済制裁下にあっても関わりなく、官民でいっそう盛んになっている