飯田氏「今回の件で非常に特徴的なのは、中国が韓国に対してかなり強い圧力をかけて、配備を防止するために努力し、かつ韓国政府が配備を決めた後も、それを撤回するように迫っているという点です。このような中国の明確な反対は、『韓国の体制に関する干渉ではないか』という韓国国内の反発を呼び起こす可能性があると思います。中国としては、東アジアにおける米国の軍事的プレゼンスを少しでも弱めたいと思っていたところ、THAAD配備によって米韓の防衛協力が更に進むことになるわけですから、これを防ぎたいと考えています。」
韓国国内には、THAADの配備に対する支持と懸念が共存しているという。
飯田氏「中国の報道を見ると、THAADの配備に対して韓国内で非常に強い反対が起きているかのような報道になっていますが、基本的に韓国内では、米韓同盟の重要性というものへの共通理解が広がっており、THAADの配備が同盟の強化になる、ということに対しての支持がかなりあると思います。
配備反対派は、これが中韓関係の悪化につながるのではないかと懸念しています。また、北朝鮮問題を念頭に置くと、『北朝鮮に対する、韓国の利益に配慮した中国の影響力の行使』が難しくなるのではないか、という懸念もあります。これらのことが、韓国内の反対派の背景にあるのだと思います。」
飯田氏「THAAD配備の波及的な効果として、日韓間の防衛協力にプラスの効果を与える可能性はあると思います。ミサイル防衛システムというのは非常に大きなシステムで、米国と韓国だけで完結するものではありません。日本の立場から北東アジアの安定を考えれば、『北朝鮮による挑発的な行動をいかに抑止していくか』が重要な課題です。中国は今回のTHAAD配備が朝鮮半島の緊張を高めることにつながる、として批判していますが、私はそれは逆だと思います。北朝鮮による、在韓米軍へのミサイル攻撃を抑止することにつながる、という観点でみれば、今回のTHAAD配備は北朝鮮に対する抑止力の強化に成り得るだろうと思います。」
安全保障面では米国、経済面では中国を重視し巧みにバランスをとっていたように見られた韓国だが、THAAD配備の決定は、中韓の蜜月関係にいったんピリオドを打ったようだ。