日本は東シナ海及び南シナ海での中国の活動にも懸念を抱いている。中国の行動に対する批判の高まりは、今年の防衛白書の特徴となっているが、これは中国側を刺激した。中国国防省の呉謙報道官によると、日本はこのような形で地域と世界の緊張をエスカレートさせようとしているという。エヴゲーニー・プリマコフ記念世界経済・国際関係研究所の職員クリスティーナ・ヴォダ氏は、このような状況について次のようにコメントしている-
「防衛白書の中で北朝鮮は国際社会全体の安全に対する重大な不安定要因とされているが、中国は脅威だとは直接指摘されていない。中国の行動が懸念を呼んでいると述べられているだけだ。それらの行動とは、中国船による尖閣諸島海域の日本の領海への侵入を意味している。また日本は東シナ海上空の防空識別圏の設定も極めて非友好的な行動だと考えている。人工島造成やそこでの軍事インフラ整備など南シナ海での中国の活発な活動も日本に懸念を抱かせている。日本は、中国がこのような形で力の現状を変えようとしていると考えている。しかし防衛白書の結論は『なだめる』ようなものだと言うことができる。文書では、これら全てが地域や世界の安全保障面での懸念を呼んでいると述べられている。
しかしこの懸念を取り除くためには、よりオープンになることを目指し、相互理解を深め、全ての問題に関する対話を発展させる必要がある。すなわち白書には中国に対話の実施を呼びかける試みがあるということだ。安倍首相は、海上での危険な行為を防ぐための『ホットライン』の設置が必要だと考えている。」
中国は現在、東シナ海で大規模な軍事演習を行っている。9月には今回の演習に引けを取らない大規模な演習が始まるが、それはロシアと合同で南シナ海で行われる。
なおロシアについてだが、防衛白書の中では特に南クリルなどの東部国境付近でのロシア軍の活動の活発化が指摘されている。また「ロシアによるシリアへの軍事介入は、一連の軍改革の成果の現れや、国際的影響力拡大を企図した動きとして注目される」と述べられている。ヴォダ氏はさらに次のように続けている-
「ロシアに対しては北朝鮮や中国のような表現は用いられていない。ウクライナをめぐるロシアの行動は、アジアを含む国際社会全体に影響を与える可能性のあるグローバルな問題としてみなされていると述べられている。またロシアは厳しい経済状況の中で自国の軍事力の増強を続け、アジア太平洋地域などで演習を行っていると記されている。しかし日本の防衛白書ではすでにずいぶん前からロシアは脅威として言及されていない。」