同時に中国の軍事活動の活発化は南シナ海でも展開されている。8月6日、中国国防省は中国空軍の大型爆撃機H-6,スホイ30数機を含む軍用機を使って南沙諸島海上で軍事警備飛行を行ったと発表。それによれば飛行ミッションは空中での防衛および攻撃方法の策定だった。
高等経済学校の専門家、アレクセイ・マスロフ氏は中国が誰かを襲うことはありえないものの、軍事大国としての姿を見せ付けたいとは望んでいるのだろうとの見解を示している。中国は長きに渡り、経済大国としての姿をアピールしてきた。それが今や、海上軍事国としてアピールしたい要求へと変わったのだ。
「中国が誰かを襲うとは思えない。自国の軍事、政治史の中で中国はそうした行為を一度も行なっていない。たしかに中国は軍事支出を拡大した。中国軍には予備兵も加えて500万人以上の兵士がいる。これはかなりシリアスな数値だ。だが中国が東アジアで展開されている不安定な状況に危惧感を抱いていることも理解せねばならない。過去5年で日本ともベトナムともアジア太平洋地域における中国との対立国とも状況は激しく悪化した。また北朝鮮の行為も終始不適切ななものだ。だが中国には軍隊は大国として欠かせない重要な要素なのだ。またこれは中国とこれらの諸国の対立ではなく、中国対米国の対立としてとらえるほうが適切だろう。
今回のレトリックは内政的な必要性から出たものだ。なぜならハーグの国際裁判所の判決は中国にとっては領土論争について国際舞台で初めて手痛い負けを帰したことになるからだ。中国は今まで一度もこうした反駁を受けてこなかった。こうなった今、中国には何が何でも要求は通すという姿勢を見せ付ける事が非常に重要なのだ。
これが引き金となって国連や他の機関から威嚇するような声明が出されるかもしれないが、米国の役割は最も重要だ。仮に米国が介入を決めたとすれば、東方南方アジアの紛争に発展してしまう。これは非常に悪いシナリオだ。米国が艦隊を派遣せず、制裁という脅しだけで済ませれば、シリアスな軍事展開を抜きにした、だらだら長引く紛争に留まる。そういう状態は今までにもある。1989年、中国の大学生が天安門広場で抗議行動を展開した際、米国は中国に対する制裁を発動した。これは何の成果ももたらさなかった。なぜなら米国は貿易相手国として中国に非常な関心を抱いていたからだ。今もまた、同じような展開になる可能性はある。」
恐らく中国は経済問題で伸び悩んでしまっている愛国心を再び盛り返そうとしているものと見られる。こうした場合はベクトルの先を対外の敵に向けるほうが都合がよい。中国の伸張を阻害する諸国が存在するとはこの国が幾度も繰り返してきた科白だ。それは米国であり、ハーグの国際裁判所もこれに該当する。中国は単に自国民に対し、新たな愛国的理想を示す必要に駆られているのだ。