電話通訳のシステムは「原始的」だ。例えば外国人旅行者がホテルのフロントを訪れ、意思疎通が上手くいかない場合、フロント従業員はコールセンターに電話をかける。そのまま受話器を渡したり戻したりして、電話の向こうにいる通訳者を介して言いたいことを伝える。テレビ電話と異なり初期投資が不要で、最も費用のかからない方法だ。携帯電話からかけてもよいので、バスやタクシー車内でもサービスを利用することができる。簡易翻訳サービスは、飲食店のメニュー表を翻訳したり、観光施設の注意事項や料金体系の説明などを多言語化することを想定している。
事業者は、月に30件の電話通訳と10件の簡易翻訳サービスを利用することができる。電話は5分以内、翻訳は1言語200文字が1件とカウントされる。利用料は、年度末(3月末)まで年間2000円だ。早く申し込めば申し込むほど、お得になる。サービスを申し込んだ事業者には、本サービスの委託事業者である株式会社ブリックスから、通訳サービスの存在を知らせるためのステッカー等が送られる。訪問者が全くどこの国の人かわからなくても大丈夫だ。コールセンター側で、何語の通訳が必要なのかを判断してくれる。
和歌山県は英語や中国語といった主要言語以外に、和歌山を訪れる頻度の高いフランス人・スペイン人に対応することを条件に委託事業者を募集した。ロシア語は、委託時業者側からの提案に含まれていた言語だ。今の段階では、県内の宿泊客数で言えばロシア人は多いとはいえないが、これをきっかけにロシア人が和歌山を訪れるハードルが下がるかもしれない。例えば、ロシア語の旅行サイトなどでよく紹介されるのは高さ・水量ともに日本一である那智の滝だ。和歌山県にはこのような自然が織り成す観光名所が数多くあるが、そもそも和歌山に辿り着くためにJRや南海電鉄といった交通機関を駆使しなければならず、そこから観光名所へ向かうとなると、言語の壁は重くのしかかってくる。
和歌山県商工観光労働部・観光局観光交流課の小倉知典氏は、「このサービスを利用いただき、色々な国の方に和歌山県にお越しいただきたい。県としてはできるだけ長く事業を続けたい」と意欲を見せている。