「これは、戦後の日本の法的規制の重荷からの脱出を目指した、非常に長く、熟慮されたうえでの、安倍氏の方針だ。中には第二次世界大戦の日本の記憶や、その戦争で侵略国の一つであったというコンプレックスにからむ、道徳的性格の重荷もあった。日本政府は、今日の世代の日本人は、何も正当化することなどない、ということを明確な方針とした。そして、日本は多くの国と同様、自らの外交利益を達成するために軍事力に訴えることもできるのだというシグナルを出している。つまり、明らかに、外交における軍事的要素の強化は世界における「真の軍事大国」という日本の新たな役割に関する安倍首相のヴィジョンに応じた国家戦略の一部なのだ。緊急事態には武力の行使をためらわないような国という役割。しかしこの政策は日本社会に多様な反応を呼び、世論はほぼ半々に分裂している」
それにもかかわらず、この外交政策は継続する、とストレリツォフ氏は確信している。
しかし、軍事費の増加は、一般大衆に対しては、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対する防衛力強化に伴う緊急出費であるとの説明がなされている。しかしそれは明らかに誇張である、という。ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのワレーリイ・キスタノフ所長は次のように述べた。
「北朝鮮の脅威は米国、韓国、日本によって人為的に膨らませられている。北朝鮮の核ミサイルがこれらの国の利益と国家の安全を脅かすなどと言うのはばかげている。特に米国だ。北朝鮮の核ミサイルは極めて低レベルで、常識的に考えれば、北朝鮮指導部に東京に核攻撃を開始する意味など何もないということはわかる。北朝鮮指導部は愚かな人々ではない。そんなことをすれば現体制の終わり、どころか国家の存在の終了を意味すると、彼らは、十分認識している」
多くの専門家が、人為的に膨らませられた北朝鮮の脅威は、この口実の下で地域での核戦力を維持し、アジア太平洋地域でワシントンの必要とする政治的・軍事戦略を実行するために、特に米国に必要なものなのだ、と言う点で意見を一致させている。東京はその戦略的な同盟国に追随するのを常とするが、日本の軍事予算の増加は、今日、それが自国の利益にも完全に合致していることを示している。
著者と専門家の意見は必ずしも編集部の立場と一致してはいません。