クリントン氏もトランプ氏も日本経済の抱える問題を解決してはくれないが、問題を増やすことはできる

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ドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン氏と差を縮めている。11月にはトランプ氏の逆転が判明するということにもなりかねない。大統領選での演説がどれほど矛盾した、エキゾチックなものに見えようと、そこには真実の粒がある。米国の経済と金融システムの問題点についてトランプ氏は激しくFRB(連邦準備制度理事会)を批判、「癌のように米国を虫食いにする巨大な負債で米国の金融システムを表彰した」と述べた。

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日本、「トランプ政権」に備える
米国の国家債務は約20兆ドルに達し、GDPの103%を超えている。「しかしFRBの役人は米国国民に対するいかなる直接の責任もない」とトランプ氏は強調した。これらの言葉は銀行家らに向けられたものでは全くなかったのに、銀行家らは警戒感を示した。数日前、世界の大手金融機関の年次シンポジウムでの講演で、FRBのジャネット・イエレン理事長は、米国はついに連邦金利を引き上げる条件をやっと整えつつあると、意味深な示唆を行った。それが11月の米国大統領選挙後か、または9月20日のFRBの次回会合の後かは不明。

一部の専門家は、金利上昇はユーロ、円、ポンドなど他の通貨に対するドルの急騰につながるとしている。一方、同じシンポジウムで日本銀行の黒田東彦総裁は、予想される金利上昇を歓迎した。「FRBが現在のゼロに近い水準からその主要金利を引き上げるのがいつになるかわからないが、それは日本経済を含め、世界経済にとってプラス要因となるはずだ」と同氏は述べ、一方で日本銀行は注意深くリスクを監視し、必要に応じて、金融政策のさらなる緩和を行う構えだ、とつけ加えた。

グローバリゼーションと社会運動研究所経済研究センター長ワシーリイ・コルタショフ氏によると、日本経済にとって非常に重要なファクターはFRBの決定だけに限らない。

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「日本は米国の古い伝統的なパートナーであり、TPPや多国籍企業にも参加しているが、日本経済は長い間、成長テンポ、安定性、改善への希望を失ってきた。ほかの誰にも与えることができないように、クリントンは日本に希望を与えることはできない。少なくとも米国経済を成長させ、他国を引っ張るレシピを持っていない。トランプは別のベクトルをもつ政治家だ。彼はまず米国自身の中で「アウゲイアースの家畜小屋掃除」が必要なことを心得ている。債務の圧力を減らし、クレジットを健全化し、アジア商品を含め、外国人のための保護関税を作ることが必要なのだ。これは、明らかに日本にとって不快なことだ。大恐慌時保護関税を引き上げた米大統領ハーバート・フーバーが日本経済に与えた影響を思い出すだけで十分。これは危機の奈落の底に日本経済を落とした。フーバーは米国の危機に対処することはできなかったのだが、輸入に対する制裁が外国市場を襲ったこと、それは事実だ。トランプが中国製品や日本車を対象にもし保護関税を設置したなら、それは両国の経済に打撃となる。もっとも、選挙でトランプが勝った場合にこのアイデアをどこまで実現できるかは別問題だ。そのことは、米国の貿易収支の赤字がそれに下向きの圧力をかけるだろうので、必ずしも他の主要通貨に対しドルを強めることにはつながらない、金利の緩やかな増加などよりもはるかに深刻だ」

黒田総裁が日本経済の状態を楽観的に評価しているにもかかわらず、ECB(欧州中央銀行)とFRBと同様日本銀行が目標としている2%のインフレはいまだ達成されていない。インフレ率は頑固に許容できないほど低いレベルを保っている。しかしワシーリイ・コルタショフ氏はインフレ・ターゲティングの有効性に疑問を呈している。彼によると、2%が3%または4%よりも良く経済成長に貢献し、いわゆる価格の安定化が経済に有用であるという決定的な証拠は存在しない。

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