しかしこの匿名の米国諜報員は、ロシアが米国の選挙戦に介入していることの反証不能な証明はない、という事実を確認している。ゆえにワシントンポストは、米国の選挙を破綻させることを目論む「ロシア・オペレーション」については明言を避け、記述は霧に包まれている。
この根拠なき対ロ非難はロシアの痕跡を至る所に探そうとするワシントンの性癖を思わせる。ロシアが執拗に世界における米国の覇権を失墜させようとしているという理由が警戒の理由となっている。恐怖症あるところ陰謀あり、それが米国の読者らに与えられる唯一の非難の説明なのだ。スプートニクはワシントンポスト記事の印象を「グローバル政治の中のロシア」編集長フョードル・ルキヤノフ氏に尋ねた。
「記事を読んだが、たしかに非常に変に感じた。それまでも米国のサーバーへのハッキング非難はあった。しかし専門家はそれを判断するのに窮している。具体的証拠がないからだ。しかしそこにはせめても不法アクセスを疑わせる形跡はあった。このワシントンポストの記事では全く何一つわからない。何について語られているのかすら不明だ。全く不明瞭な、米国民主主義と米国政治の不首尾に対する不信を米国市民に広めようとするロシアの大規模計画についての言葉があるのみだ。しかしそれが現実にどうできることなのか記事は全く記していない。ゆえに記事全体が非常に不可解な一連の陰謀論からなっているという印象をうむ。ふつうこういうことは自分に自信がないために起こることだ。おそらくロシアでもこの感じは馴染みのものだ。しかしどうやら同じことが米国でも起こるようだ」
「不一致は非常に大きく、また大きくなり続けている。米国でもそれは誰もが感じ、見るところだ。両党の予備選でそれは示された。この傾向は政治階級にあまりに強い混乱と当惑を与えており、これから自分がどうすべきか分からなくなっている。ロシアに対する無根拠な各種の非難も大統領選挙における支持率低下や失敗も現状における米国の政治階級の当惑感へのリアクションであるということも私は排除しない。米国にこのようなことはかつてなかった。少なくとも相当久しくなかった。ベトナムキャンペーン前後には困難な時期もあった。しかし米国が脆弱であり得るような政治的状況は私の記憶にはない。米国の政治文化全体がちょうど正反対なのだ。そこでは常に米国の絶対的パワーと全てに打ち勝つ可能性が強調されていた。その意味で今の大統領選挙は過去のものと異なる。それはいま米国社会で起こっている深刻な変動と関係しているだろう」
クリントン氏のアドレスが不正アクセスされたとき、せめてもの正当化および有権者の注意をそらすために、同氏はロシアカードを切った。氏が今後ライバルを何で攻撃するか、我々はワシントンポストの次号で知ることができるかもしれない。
ところでロシア大統領は先日ブルームバーグのインタビューで、ロシアは米国のいかなる政権とも関係を改善し建設的協力を行う用意が常にある、と述べた。