なお、せきこみ、意識を失うクリントン氏に関するトランプ氏の攻撃的な発言は乱暴に聞こえるかもしれないが、これは今に始まったことではない。
ロシア戦略研究所の副所長で歴史学博士のタマーラ・グゼンコワ氏は、人類の歴史の中では常に権力の化身に大きな関心が払われてきたと考えている。グゼンコワ氏は、ロシア戦略研究所のホームページに掲載されている自身の論文の中で、古代社会では指導者の健康が部族の幸福や健康を示しており、指導者が病気になった場合には、それが全ての民にうつらないようにするために指導者が殺されることもあったことが知られていると指摘し、それ以来、指導者の物理的なパワーと民の幸福の不思議なつながりについてのイメージが、人々の中に意識的あるいは無意識的に残ったと述べている。
グゼンコワ氏は、あらゆる国で選挙前には若さと健康の象徴的価値が特に顕著になるとの確信を示している。ロシアで1996年に行われた選挙の前、ボリス・エリツィン氏はすでに病気を患い深刻な状態にあった。しかし選挙マネージャーたちは有権者を前にエリツィン氏を躍らせた。またエリツィン氏が政治家の中で最も優れたテニスプレーヤーだというイメージもつくられた。西側でロシア大統領の健康状態が嫉妬深そうに監視されているのはよく知られている。グゼンコワ氏はこのように続けている。
ロシア大統領の見事な肉体とエクストリームスポーツへの関心は、反論者たちを苛立たせている。プーチン大統領やその家族の健康上の深刻な問題に関する、明らかに社会に疑問の種をまこうとしている情報が、定期的に発信されている。そしてクレムリンの国際的な政策が活発になればなるほど、外国のマスコミはロシア大統領の健康にさらなる関心を示す。グゼンコワ氏はこのように指摘している。
米国で選挙が行われるまで残りわずか。そのため政治的正しさはさておき、政治団体の争いはさらに熾烈なものとなるだろう。しかし、いわゆる個人的なものは一切なく、あるのはビジネスのみだ。そしてその価値が、大統領の椅子なのだ。
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