しかし、ロシアの軍事専門家ウラジーミル・エフセーエフ氏によれば、治安を根拠にTHAADシステム配備を是とする主張には、情勢上の必要から言っても、システムの能力からいっても根拠がないという。
「ロシアが韓国に発射するつもりはないことは明らか。しかし、たとえ仮に撃ったとしたとしても、米国のシステムがロシアのミサイルを迎撃することが可能であるというのは事実ではない。しかし、重要なことは、そもそも韓国の領土に展開されるTHAADシステムは韓国人を守るシステムではないということだ。これは韓国人の防護のためだという指導部の声明にもかかわらず、 THAADシステムは第一に朝鮮半島の米軍施設を保護するために設計されている」
システムの強力な放射線が地域住民の健康に害を与える可能性や、北朝鮮をさらに刺激することにしかならない、という根拠から、韓国へのTHAADシステム配備への抗議が活発化している。露中もこれをアジア太平洋地域えのグローバルMDの展開につながるものと見て反対の意を唱えている。しかし、すでに今、韓国では、攻撃の際のミサイル迎撃計画が話されている。今回の韓国国防相発言はどう説明されるのか?
今回のレトリックのもう一つの要因は、非常に不安定な立場にあるパク・クネ氏だ。任期はあとわずか1年。最近では保守派の影響が強くなっており、パク氏の政策は、前任者イ・ミョンバク氏のそれにますます似通ってきている。つまり、より右寄りに。そこからこの声明が出たのだ。また、ロシアに圧力をかけたいという願望もすけて見える。ロシアに北朝鮮の核・ミサイル開発への圧力をもっとかけてもらえるように、ということだ。しかし、ミサイル防衛システム配備とそれによる反撃の可能性に関する韓国国防相のレトリックは、朝鮮半島の状況を改善することにはつながらない」
先にロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は「韓国への米国ミサイル防衛要素の展開の決定は、地域情勢や北朝鮮の抑止という課題をさらに複雑にする」と指摘。北朝鮮の核計画に関しては、パク大統領は最近、地域の安全保障への最大の脅威は北朝鮮の核開発であるとして、圧力一辺倒になっている。ロシアもまた、北朝鮮が核保有国となる権利を認めていない。しかし、ロシアの立場は、北朝鮮による挑発行為の停止だけでなく、それにはソウルとワシントンの対応措置が必要だ、というものだ。たとえば、平壌を挑発することにしかならない朝鮮半島における軍事演習の縮小など。それらは「緊張を生み出す」相互非難の悪循環に状況を変えてしまう。
そして、互いにミサイルを撃墜するという約束。しかし、このような核のピンポンに、勝者はあるのか?
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