この1年のシリアにおけるロシアの軍事行動の成果はいかがなものか。紛争に変化を与えたのか。「グローバル政治の中のロシア」誌編集長フョードル・ルキヤノフ氏がスプートニクに語った。
「ロシアの最大の功績はシリアという国の完全崩壊を回避したことだ。ロシアの介入がなければアサドも、シリアという国も、もはや存在していないだろう。2015年の夏秋にはそのような脅威は非常に高まっていた。しかし、この間に政治解決や情勢安定化が進んだとも決して言えない。軍事的な方法で勝利を収めることは誰にもできない。シリア正規軍はロシアの強力な支援を受けてさえ軍事的課題を達成することができない。反体制派にも勝利は不可能だ。なのに政治的なプロセスが全く進まない。対立する勢力が、力では何も手に入らないということを十分に理解しないためだ。それに、交渉当事者の確定が非常に難しい。特にアサド反対派。これが政治解決という課題を非常に遠ざけている」
「米露の不信はほぼ100%だ。シリア紛争における全体的な対立の一環として情報戦争も行われている。影響力の点からいえば、ロシアはシリアにおける最重要のプレイヤーだ。これが米国を不満にさせ、苛立たせている。シリア紛争の各参加者がそれぞれ課題をかかえている。そのすべてが公表されることはないが、それはこのような大きな紛争では不可避のことだ。米国自身、自分がシリアで何を成し遂げたいのか分からなくなっており、それがシリアにおいて自信を失うということにつながっている。ロシアは米国には手のつけようもない重大なファクターになっている」
米国の苛立たしいレトリックを背景に、シリアの停戦がそれでも成立することを期待できるか。フョードル・ルキヤノフ氏は次のように語る。
「おそらく現時点では停戦の希望はない。停戦を成功させる一番の障害は、米国がパートナーとして一枚岩ではないことだ。米国の中にも本当に合意を望んでいる人たちはいる。オバマ大統領やケリー国務長官などはやはりそうした立場だ。しかしペンタゴンは、明らかに違う立場だ。オバマは退きつつある大統領であり、できることはどんどん少なくなっている。ペンタゴンはロシアを全く信用していない」
しかも、シリア紛争には、ますます多くのファクターが絡んできている。シリア紛争はこれから地域に拡大していく傾向を持っているのか?
「奇妙なことに、地域への拡散のリスクは、紛争勃発当初より下がっている。これまでシリア紛争における主要なプレイヤーには、露米のほかに、トルコ、サウジアラビア、カタール、イランがいた。今は状況が根本的に変わった。紛争の本質が変わったのだ。地域諸国は脇へ退き、ロシア内部のプレイヤーにすべてが集中してきた。今は彼らが大きく情勢を左右する」
いずれにせよ今年どうなるか予断を許さない。シリアの完全崩壊という最大の目標はロシアは達成した。しかし、シリア紛争における米露の間接的競合は、明らかに今後も激化していく、とフョードル・ルキヤノフ氏。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。