ロシアにより提起されたプルトニウム処理についての合意案の討議を、上院・連邦会議は、10月12日にも行う可能性がある。国際問題委員会のメンバーの一人、イーゴリ・モロゾフ上院議員は「決定が迅速に下されたのは、この問題がつい昨日議題に上がったばかりのものではなく、もう大分以前から討議されているものだからだ」と指摘した。ロ米間の合意は、2018年から双方が、プルトニウムを原子炉の中で「焼却する」ことにより核兵器製造に適さない状態にして移動を開始することを規定している。ロ米双方は、兵器級プルトニウム34トンの処分を計画していた。しかし、ロシアが合意遂行のため必要なインフラストラクチャーを作ったのに対し、米国がそれをしなかったことが、合意の一時停止を呼び起こすことになった。ロシアは合意に従い、兵器級プルトニウムを実際に処理したが、米国はプルトニウムを所蔵しただけだった。つまり、米政府は、自国のプルトニウムを「焼却」せず、他の材料でそれを薄め、放射性廃棄物貯蔵所に置くことを計画している。そうすることで、米国がプルトニウムを兵器級に戻す潜在的可能性を保つならば、つまりプルトニウムを回収し加工して、再び核兵器製造に適した材料に替えることが可能となる場合、核のアンバランスが生じてしまう。
「ロシアの行動は、普通の論理により示唆される。なぜなら、どのような国防戦術も、戦術的及び戦略的攻撃力と分かちがたく結びついているからだ。米国は、ミサイル防衛(MD)プログラムを、ブッシュ時代にすでに現実のものとし始めた。当時ロシアはすでに、もし米国が欧州でMDシステムを発展させるならば、我が国はそれに対抗して、米国のミサイル防衛システム(MD)を克服できるような手段を作り出さざるを得なくなるだろうと率直に警告していた。しかるべく自らの核の盾を拡大するという事だ。これは、ロシアの国境と世界におけるロシアの国益を擁護するために全く理に適った措置である。もちろん、これはシリアでの出来事と何の関係もない。最近数年間、合意実施に関する合同査察が、明らかに空転するようになった。それゆえ、戦略的計画の中心部である米国の核施設にロシアの専門家がいないという事も、言うまでもなく、この決定の採択に影響を与えた。」
それにもかかわらずロシア政府は、プルトニウムに関する合意遂行再開の可能性を除外していない。しかしそれは、NATO諸国における米国の限定兵力及び軍事インフラの縮小があって初めてありうることだ。対ミサイル防衛に関する合意離脱のイニシアチブを取ったのはロシアではない。米国側だ。 ジガリョフ下院議員は「そのことが、ロシアの戦略攻撃力開発のための原動力になったのだ」と指摘し、さらに次のように述べた―
「米国は、欧州にMDシステム関連施設を配備しただけではなく、同時に超音速ミサイルも発達させている。その際米国は、そうしたミサイルを当然、戦闘態勢に置く用意がある。米国のプランでは、その時期は2025年とされている。米国は極めて積極的に、高精度の代替え兵器を発達させているが、それらは防衛兵器ではなく攻撃用のものである。それ故ロシアも、同様の措置を講じ行動せざるを得ない。しかしプーチン大統領が一度ならず指摘したように、コストといくつかの新しい技術的観点から見て、常にロシア側の対抗策の方が、はるかに安くつく。」
当然ながら、こうした状況は、少なからず危険になりつつある。例えば、欧州でミサイル防衛システム関連施設配備というプランを実現しながら、米国は、ただ一つの目的を達成しようとしている。つまり欧州の人達を、欧州大陸の軍事化という米国のプランの人質にしようとしているのだ。この様に指摘したジガリョフ下院議員は、また次のように述べた―
ロシアは、プルトニウム処理に関する合意を一時停止することで、世界の世論の注意を、核兵器製造用プルトニウム処分に関し米国人が自ら負った義務を遂行しないことに向けている。この事は、悲しむべき事実だ。なお一部の専門家達は、米国が義務を遂行しない理由は、プルトニウムを再利用し核潜在力を維持したいという望みばかりでなく、米国の核開発部門が、ロシアに比べ技術的に遅れているからだと見る向きもある。
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