ロシアと米国は米国で大統領選挙が終わるまではシリアに関して何らの飛躍的合意も結ぶことが出来ない。ロシア議会上院国際員会のコンスタンチン・コサチョフ議員が述べた。
ロシアのラヴロフ外相は米国のケリー国務長官との会談で度々シリアに関して一致点を見つけてきた。しかしケリー氏が合意実現に乗り出すや否や、ワシントンからはそのたび修正がとどき、または、合意は実施されないとの断定が出された、と同議員。
「ペンタゴンはオバマ大統領を弱虫と見なし、大統領には複雑な決定は出せないとみなしていることにすべての原因がある。結果たえざる後退があり、それで米国の国益が損なわれている。ペンタゴンは昔からオバマ大統領に対しシリア軍事作戦開始を求めてきた。しかし当局者らはそうした行動の危険性をよく理解していた。しかし軍事当局の執拗な要請があり、ホワイトハウス内での紛争が勃発してしまった。オバマ大統領が自分のいる場所でシリアにおける戦争の可能性に言及することを禁じるまでの事態となった。しかし今やペンタゴンは、オバマは弱い、彼には決定が下せないと感じ、オバマ氏の背後で何事かを行おうとするようになった。シリア紛争の現段階ではケリー国務長官はロシアとの交渉を積極的に推進していた。それに尋常でない努力を傾けてきた。オバマ大統領もそれを支持していた。しかしそのような膨大な努力のすえ達成されたせっかくの合意は結果的に破綻してしまった。オバマ政権が今日の時点で、残念ながら、軍部および同盟者らに管理を及ぼせていないからだ。よって、こうなると、現政権と合意を結んでももはや意味がない。それは米国との関係が悪いからではなく、単に、米国には今の状態では合意を順守することができないという現実を理解しているからだ」
しかしそのような状況が当事者間の全面的な無理解に至り、ペンタゴンがシリアに関するいわゆる「プランB」を実現しだすということにならないものか。そのプランとは他でもない、シリアの政府軍に対する攻撃というものである。このような報道を背景にすると、デリゾールにおけるシリア軍への攻撃は、一種の「試作」のように見える。もっとも米国は依然としてそれを「偶然的な誤り」であるとしているが。多くのアナリストが、ペンタゴンは真剣にいわゆる「沈静化のための過熱化」の可能性を検討し、分析していると見ている。
「ペンタゴン内の多くの人が、現状では、紛争を軍事的に解決したくて手がうずいている。過熱化の危険は本当に高い。プーチン大統領はプルトニウム最後通牒をもってどうにかヒステリーをおさめて一定時間ほとぼりを冷ますべきだと訴えた。もし米国がリスクをとってシリア軍に攻撃を行い、その中にフメイミム基地もあったなら、彼らがロシア機を撃墜しないとう保証などどこにもない。したがって、対向して米国機が撃ち落とされないとうい保証も。もし両核大国間の紛争が部分的にもせよカリブ危機のレベルに近づいたなら、欧州のパートナーらが米国の紛争軍事解決を支持するとは思わない。おそらく事態を悪化させた米国自身が悪いというだろう。誰もそれほど厳しく両核大国が争うような世界に生きたくはないから」
「クリントン氏になろうとトランプ氏になろうと、ロシアにとってそう大きな違いはない。とにかく決定をただとるだけでなく実行もできるような新たな面々が来ることが大事だ。ヒラリー・クリントンを悪魔化し過ぎることも控えたい。たしかに独自の観点や状況への厳しい発言が見られる。しかし政権につきさえすれば、観点を軟化させるかもしれない。指導部交代にともない、ペンタゴンも好戦的な立場を改めるかもしれない。すれば対話に復帰することが我々には容易になる。なにしろロシアと米国はシリアにおいて共通の利益をもっているのだ。シリア内戦に終止符を打つ、ということがそれだ。それぞれがそれぞれ背負っているものがあるのは当然。しかし、ロシアも米国も、シリア紛争にあまり深入りしたくない、むしろそこから抜け出したいと願っているのだ」
米国がシリア紛争に関わる限り、毎月毎月米国は敗北を喫し、イメージを大幅に下げている。誰を信頼したらいいのかもはやわからなくなっているのだ。よってロシアと米国双方の利益のために、シリアに関し何らかの妥協を見つけた方がいい、とミルゾヤン氏。
なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。