市場参加者は、米国の新大統領の政策が経済的およびグローバルな不透明感を引きこすのではないかと危惧している。移民に反対し、メキシコとの国境に壁を建設することを約束したトランプ氏の発言に最も敏感に反応したメキシコの通貨ペソをみれば、その驚きの大きさが分かる。ペソは、過去10年間で前例のない水準まで下がった。アジアの為替市場では米ドルに対する円とユーロがそれぞれ3.4%、2.5%と著しく上昇した。原油価格、ロシア通貨ルーブル、ロシアの株価指数は下落した。事実上、世界市場はトランプ氏の勝利を予測していなかった。最初の反応はパニックを彷彿させた。投資家らは、株や新興国通貨を売り、金、国債、円などの「安全資産」に逃げている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア投資ストラテジストの藤戸則弘氏は、投資家たちはリスクから逃れることを必要とする予期せぬ状況に直面したと指摘している。
国家戦略研究所のニキータ・クリチェフスキー氏は、「全体として米大統領選は、有権者が、過去10年間で世界の基本となった貿易障壁を取り除く路線を含む、政治・経済的現状を拒否したことを示した」との考えを表し、次のように語っている-
「米国は、とてつもない社会階層、何千万人もの米国人の幸福を投機家のゲームに依存させた『両替屋』とウォール街の試みに反対票を投じた。また米国は、生産拠点が海外へ移り、その所有者が外国で得た利益に対して課される税金の支払いを免除され、国民は職を失い取り残される経済モデルに反対票を投じた。また米国は、一般的な生活を送る人々の安定した生活が、第三国の政治・経済的成り行きに直接比例する外の世界への経済的依存にも反対票を投じた。」
今後の市場の反応や動向の予測を請け負った経済学者は誰もいない。なぜなら新大統領の政権がどのようなものになるのか、どのような方針をとるのかがはっきりしないからだ。一方で大勢の人が、市場のボラティリティは少なくとも2週間は続くとの見方を示している。
米国では12月19日に選挙人による形式的な投票が行われ、2017年1月6日に連邦議会で開票、結果が確定される。そして新大統領の就任式は、1月20日に行われる。