ロシア新聞やリア・ノーヴォスチといったロシアメディアに大きく取り上げられたのは、日露経済協力による都市環境改善のモデル都市として、ヴォロネジが選ばれたことだった。30のプランの詳細がまだ詰められていない中、なぜ、ヴォロネジだけ先に公表されたのか?そもそもヴォロネジという地名に馴染みがない読者もいることだろう。ここまでの経緯を簡単におさらいしてみよう。
ヴォロネジ州はロシアの南西に位置しており、農業や機械製造が盛ん。州都ヴォロネジ市の人口は約103万人だ。ロシアNIS貿易会(ROTOBO)が発行している「ロシアNIS調査月報」の2014年2月号では「ロシアの有望地域を発掘する」という特集の一環で、ヴォロネジ州の投資プレゼンテーションについて紹介されている。それによると、この地域が理工系の有数な人材を多数抱え、投資プロジェクト窓口の一本化や税制優遇策などを組み合わせて、投資を積極的に誘致してきたことがわかる。また、現在の州知事は元農業大臣のアレクセイ・ゴルデエフ氏で、自身が長年携わってきた農業分野だけでなく、産業多角化を積極的に推進している。日本企業との関係で言えば、昨年3月には、ヴォロネジ州マスロフスキー工業団地において、古河電工の関連会社であるOFSロシアの光ファイバー製造工場の開所式が行われた。
日本のインフラ技術を輸出するといっても、ロシア側のニーズと適合しなければ意味がない。関係者によれば、日本側が提供できる技術とロシア側のニーズのマッチングが一番上手くいくと思われたのが、ヴォロネジだったということだ。実際にどのような都市環境改善のプランが実施されるかは、来週にも明らかになる予定だ。
世耕大臣は、政府要人との会合以外に、モスクワ北東部のボタニーチェスキー・サード駅周辺一体開発事業やうどん店チェーンの丸亀製麺も視察した。ボタニーチェスキー・サードのプロジェクトはインフラ分野の日露協力が先行して進んでいる好例であり、ロシアのデベロッパー「ピオネール」と日本の建築事務所「日建設計」のタッグで成り立っている。従来の地下鉄駅に加え、9月に環状線が開通したことで、より利便性が向上し注目度の高まっているエリアだ。同プロジェクトの視察には上月豊久ロシア大使やロシア建設・住宅公営事業省のチビス次官も同行した。ピオネール・モスクワのアルチョム・エイラムジャンツ社長は世耕大臣の来訪に対して「ピオネール・グループのグルージン社長が立会い、再開発の中での住居部分のプロジェクト『LIFE』やTOD(交通結節点)についての話、日本企業との協力が上手くいっていることについて話をしました。視察は非常に手ごたえがあり、私どもの感覚では、世耕大臣、上月大使とも、このプロジェクトに感心して下さったのではないかと思います。日本企業との協力は目的にかなったもので、今後も発展していくでしょう」と述べている。